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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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duplicatin cyst

MISSION

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strategy
今回諸君に課せられたミッションはこうだ。60歳女性に人間ドックの腹部エコー検査で肝臓に3cm程度のしこりが見つかった。精密検査の結果 、しこりは肝臓ではなくどうも食道にあるらしいことがわかった。しかししこりの性質まではわかっていない。そので今回のミッションだが腹部に最大2cmのキズでこのしこりを摘出してもらいたい。いつものことだがなにが起ころうとも当局は一切関知しない・・・それでは成功を祈る。

STRATEGY

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e-cyst肝臓を上に持ち上げると正面 にピンポン玉大の球形の腫瘤が確認された。今回のミッションは食道の腫瘤(しこり)である。症状はまったくなく、人間ドックでたまたまみつかったものだ。胃カメラ、CT等から下部食道であり胸の中でなくおなかの中に腫瘤はあると判断した。しかしMRIや超音波内視鏡検査を施行するもどういった性質の腫瘤かがわからない。つまり治療が必要か何もしなくてもいいものなのかもわかっていない。MRI検査では腫瘤の内部は液体であると読んだが超音波内視鏡では中身は固形物であると読んだ・・。悪性か良性かも不明である。総合的にみて良性のものである可能性が高かったため腹腔鏡下に腫瘤だけをくり抜く手術を選択することとした。

DOCUMENT

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e-cyst2腫瘤は壊れることなく球形のまま切除された。体外に摘出する直前の様子である。全身麻酔下に臍の下に1cmの切開をおいて腹腔鏡を挿入した。左上腹部に12mmのポート、正中に5mmのポートを2本、合計4ポートで手術を行った。肝臓を持ち上げると正面 にピンポン玉の大きさのしこりが見える・・あった、これだ!、とまずは第一段階の関門を突破。やはり場所は食道にあるようだ。食道と胃のちょうど境目あたりに鎮座している。さてどうしたものか?とにかく剥離して切除しよう。できれば胃や腸に向かう迷走神経を切らないようにしないと・・と考えながら切除、剥離ラインをイメージする。ハーモニックスカルペルを用いて腹膜を切開していく。全周に腹膜は切開した。勝負はこれからだ。腫瘤をくり抜くとはいっても簡単ではない、油断すると食道に穴を開けてしまう。食道に穴を開けるとあとがやっかいだ・・最悪の場合大きな開腹をしなければならない可能性がある。術後の縫合不全の懸念も出てくる。今回は食道内に胃カメラをおいて手術のガイドをすることとした。腹腔内と食道内の両方から観察し手術を遂行した。手術を遂行していくとやはり簡単ではなかった。しこりの壁と食道の壁が一体化している・・ゆで卵の殻をむくように”ポロッ”とはいかない・・食道の筋肉の壁は切除しなければこの腫瘤は切除できない。しかし食道の壁に穴をあけるわけにはいかない・・食道の粘膜という薄い軟らかい膜だけをとにかく残してこのピンポン玉 を切除していく他ない・・1mm進のに1分くらいかかる感覚であった。とにかく集中・集中。最後の1本の細い筋がピンポン玉 のような腫瘤から離れてやっと終了した。幸い最後まで腫瘤を破ることもなければ食道粘膜を破ることもなかった。欠損した食道の壁は軽く縫合し手術を終了した。幸い術後はなんら問題なく経過し退院した。
specimnen摘出した腫瘤を切り開いたところ。内部に黄褐色の半流動体(ソフトクリーム位 の固さ)をいれた嚢胞(のうほう)であった。結局、先天性の食道重複嚢胞(良性)との診断であった。

COMMENT

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scar術後1週間の腹部の様子。しこりを取り出したのは左上腹部の2cmの傷から。今回もけっこう厳しい戦いではあった。ひとつには術前にちゃんとした診断がついていなかったために戦略が立てづらかった。腫瘤の存在する場所と性質、いわゆる部位 診断と質的診断が確定していなかったため、いったいどのようなオペになるのかは予測がつかなかった。いろいろなケースを想定しイメージトレーニングをした。幸い考えていた最も楽な部位 に腫瘤は存在した。しかしDOCUMENTの項で記したように単純作業ではあったが切除はけっこう大変だった。幸い食道の粘膜を傷つけることもなく嚢胞は一括で切除できた。

手術後の病理学的な検索で腫瘤は食道の重複性嚢胞という比較的希な病気であることがわかった。先天的に存在していたと思われるが無症状で数十年間過ごしていた。結果 的には今後何もおこさなかった可能性もあり、あえて切除する必要はなかったかもしれない。しかし切除したから、そのことが判明したわけで、良性だろうと経過をみているうちに切除不能の悪性腫瘍であることが判明してしまうという最悪のシナリオもありうる・・

いずれにしても、今回のケースは最小限の切開で完全切除できたという点からは評価できるだろう。食道のあの部位 の腫瘤を開腹で切除しようとすると、少なくとも20cmの切開は必要と思われる。痛みも少なく醜い瘢痕(はんこん)もきわめて小さいという点でこのような良性疾患には内視鏡手術の恩恵が特に大きいと思われる。

(2002年)

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