I TOP I site policy I LinkIconcontact I
Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
印刷用表示 |テキストサイズ 小 |中 |大 |

HOME > Xero Mission > HALS TG

mission main bar

totalgastrectomy

MISSION

MISSION

strategy
今回諸君に課せられたミッションはこうだ・・
78才の女性の胃ガンのケースである。ガンは発熱の精密検査の途中にたまたま見つかった ・・まだ早期ガンであると思われるが胃の上部に存在し組織的には印環細胞癌である・・発熱は現在ステロイドの内服でおさまっている。このケースで最小限の腹部切開で病変を摘出してもらいたい・・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・、それでは成功を祈る

STRATEGY

STRATEGY

strategy
ugi胃のバリウムのレントゲン写 真。赤い三角で指したところに小さな胃がんがあります。今回は早期胃ガンのケースである。これまでと違いガンは胃の上部にあるため胃の下2/3以下を切除するLADGは施行できない。組織学的に印環細胞癌というタイプであり病変の広がりがわかりづらく、リンパ節転移のリスクも高いのでリンパ節郭清は必須である。不明熱で入院、内科で”血球貪食症候群”という外科にはなじみの少ない疾患の診断がついている。プレドニンを内服中であり縫合不全や術後感染のリスクは相対的に高いと思われる。病変の位 置や性質から胃をすべて切除する”胃全摘”か胃の上部のみ切除する"噴門側切除"かの選択となる。切除、リンパ節郭清、再建等を総合的に考慮した結果 今回のケースでは左手をおなかの中に入れながら内視鏡手術を行う"HALS"=ハルスという方法で行うこととした 。

DOCUMENT

DOCUMENT

document
hals腹腔鏡で見た手術中のおなかのなかの様子。”大きな”手が見えます。今高熱が持続し入院、精査をしているときに、たまたま見つかった早期胃ガンの患者さんがいるので腹腔鏡補助下胃切除LADGできないかと内科の主治医から相談があった。詳しく話を聞くと不明熱は最終的に血球貪食症候群という希な疾患らしい。治療として副腎皮質ホルモン、いわゆるステロイドを内服しているとのことであった。この薬は魔法のような薬であり炎症を強く抑える働きがある一方、外科的立場からすると縫合不全がおこるリスクが上昇する、感染に弱くなる、副腎不全になる、胃潰瘍になりやすくなる、等の懸念がある。またガンの胃内での位 置が手術を行う場合、非常に重要である。場所によって手術方法がかなり異なるからである。胃カメラでみると胃のちょうど中央付近とのことであったが実際バリウムを飲んだレントゲンを撮ってみるとかなり病変は上であった・・・つまり胃を残すことができないと判断せざるを得なかった。つまり胃を全部とってしまう手術が必要ということだ。
手術は全身麻酔下に行われた。まずはじめに上腹部にものさしで計った8cmの線を引いて正確にそのサイズに開腹した。その小さな開腹創にLapDisc®(Hakko)を装着する。左手を腹腔内に挿入しそれをガイドに臍上から1cm の皮膚切開をおいて腹腔鏡を挿入する12mmのポートを挿入した。患者さんの右側腹部に術者の右手用5mmのポート、左側に助手用の5mmポートを2本、合計4個のポートを挿入した。LapDiscのアイリスを手首に密着させるくらいに絞り空気の漏れを防ぐ。腹腔内に炭酸ガスを送り手術のための空間を確保する。カメラで見る手は巨大だ 。オペレーターの左手と助手の鉗子とのコンビネーショspecimen摘出した胃とその周りの脂肪組織。この中にがんが転移するかもしれないリンパ節が含まれています。 ンで視野を形成し寸分違わない切離ラインをイメージし超音波凝固切開装置でどんどん切離していく。胃を大腸や後腹膜から完全に剥離が終了するのにそれほど時間を要しなかった。やはり”手”の力は偉大だと再認識させられた。微妙な操作ができるしある程度力をいれて臓器をつかんでも損傷する心配もない。もし不意の出血にみまわれたらすぐに押さえればいいと思っていたのでけっこう大胆に切離・剥離が可能であった。
血管処理をどの時点でするかであるが腹腔鏡下でなく直視下に行うことが理にかなっていると判断した。主要な血管を根部で処理し、十二指腸と食道を切離し胃を摘出した。小腸を使ってRoux-en Y法という最もオーソドックスな方法で再建した。

手術後の経過は良好であった。キズの痛みは驚くほど軽度であり手術の翌日から何の問題もなく歩行可能であった。その後の経過もきわめて順調である。

COMMENT

COMMENT

coment
ext手術中の様子。3人ともテレビモニターを見ながら手術をしています。術者の左手がおなかの中に入っているところに注目。胃ガンの治癒はガンの広がりの程度や位 置、組織学的な性質等によって様々であるが、ガンを含む胃を切除しなければならないという原則は変えることはできない。問題はどのような方法でどれだけの胃を切除するかということが問題である。胃ガンは胃の内側の粘膜というところから発生しどんどん深いところに根を伸ばしていく。血管やリンパ管に進入し遠隔転移やリンパ節転移をきたす。見つかった時点でいったいガンはどこまで広がっているのか?ということが正確にわかれば必要かつ十分な切除範囲でガンを治癒させることができる。つまり胃の粘膜内に完全におさまっておりリンパ節転移がないということがわかればおなかを切らずに胃カメラで切除するEMRの適応となる。もし多くのリンパ節に転移している可能性がある場合はおなかを25cm程度切開し胃を切除する開腹手術が必要になる。胃カメラで切除が不十分になる程の大きさのケースやリンパ節に転移しやすい性質のガンではたとえ早期に見つかったガンでも今回のようにリンパ節と胃をひとかたまりに取る手術が必要になる。胃を全部切り取るような大きな手術でも今回の方法を使えば従来の1/3程度の切開で可能になる。胃の下2/3に存在する胃ガンに対してのLADGは以前のMISSIONでも取り上げたように5cm程度の切開で可能であるが、今回のように胃を全部取る手術では胃の代わりの食べ物の通 り道を作成する”再建”が容易でないため5cmでは困難であると考えられた。そうであれば最初からもう少し大きく開ける方が理にかなっている。そう考えた結果 の戦略はHALSを使うということだった。HALS(ハルス)はHand-Assisted Laparoscopic Surgry、日本語でいえば用手補助下腹腔鏡下手術といるお堅い名称になってしまう。簡単に説明すると通 hals今回は5mmのキズが3カ所、1cm のキズが1カ所そして手を入れるためにもうけたキズが8cmでした 。常は5mmから1cm程度の小さな器械だけで手術を行うのであるが7-8cm程度の切開をおいて”手”を使いながら内視鏡手術をするというものである。HALSを行うとあらためてヒトの”手”の偉大さに感動する。ひとつの器械は通 常ひとつの目的しか達成できないが”手”はいろいろな操作がかのう可能な”万能の道具”である。

このHALSに必須ないdeviceのハンドポートにはいろいろなものがあるが今回はLapDisc®という埼玉 医科大学の下村一之先生が開発されたものを使わせていただきました。非常に使いやすかったです。ありがとうございました。

(2004年)

mission foota