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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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HOME > Xero Mission > TEP for inguinal hernia

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MISSION

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今回諸君に課せられたミッションはこうだ。アダルト・ペイシャントおける左右両側のソケイヘルニアだ。 このケースに最大1cm以下の切開で両側のソケイヘルニアを修復してもらいたい。手段は問わないが、例によって何が起ころうとも当局は一切関知しない・・・、それでは成功を祈る・・・


STRATEGY

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extソケイヘルニアの手術中の外の様子。右も左も同じキズからアプローチするが術者の立つ位 置が違う。写真は左側のヘルニアを処理しているところです。カメラは臍の下から1cm、手術器械は5mmのキズを2カ所から挿入する。成人のソケイヘルニアに対する内視鏡手術は大きく分けて2種類ある。ひとつは内視鏡をおなかの中(腹腔内)に入れて手術を行う方法、もう一つはおなかの中には入らず直接ヘルニアの病巣そのものに到達する方法がある。専門的には前者をTAP(タップ)、後者をTEP(テップ)と呼んでいる。どちらも長所・短所があるがi-Missionは、個人的には後者を好んでいる。それはこの術式が非常に合理的で納得がいくからである。今回の両側のソケイヘルニアの手術においてもこのTEP法を用いた手術を施行することとした。

DOCUMENT

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retroperitoneal cavity写 真右上の丸く凹んでいるところがヘルニア門といって腸などが皮膚のしたに脱出するところです。写 真は左側を示しています。このケースでは右側にも同じようにくぼみがありました。このケースにおいては全身麻酔で手術を行うこととした。臍下に約1cmの皮膚切開をメスにておく。皮下組織を電気メスで切開し腹直筋前鞘に至る。正中で開けると腹腔内に入ってしまうので少し正中をずらしてメスにて切開すると腹直筋の繊維が縦に走っているのが見える。腹直筋を左右に開くと腹直筋の後鞘が見える。人差し指で軽く剥離してそこから専用の風船(バルーン)を挿入する。バルーンを膨らませて本来ないはずの空間(スペース)をそこに作成する。これは本当にマジックだ。すべてがオートマチック・・感動する。人工的に作成したスペースに炭酸ガスを送り空間を維持しオペは遂行される。空間を作成するのもオートマチックであるが、ヘルニアの手術でのポイントとなるヘルニア嚢という腹膜という薄い膜でできた袋を直接ヘルニアというタイプでは自動的に戻してくれる。つまりこれもオートマチックである。今回のケースでも直接型のヘルニアであったのでオートマチックにことは済んだ。もちろんバルーンだけで剥離は完全でないので直径5mmのマジックハンド(鉗子)で剥離を完全にする。左右両側を剥離した後、腸の出てくる穴(ヘルニア門)を塞ぐ必要がある。これは直径10mmのカメラポートから特殊なメッシュシートを挿入し、これまた特殊なピンでメッシュがずれないように固定し、めでたくオペは終了ということになる。炭酸ガスを抜いた後3本の筒(シース)を抜いて3カ所の皮膚を閉じればオペは終了ということになる。おなかの中に入らずに手術をしているのである意味、精神的に楽である。メッシュをおいてから終了までもあっという間である。今回のように両側のヘルニアの場meshヘルニア門を特殊な合成繊維(プロピロピレン)の網(メッシュ)でカバーしたところ。これは右側の写 真です。合は本当にこの内視鏡手術の威力を感じる。

COMMENT

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scar手術後14日目のキズの様子。臍下に1cm、下腹部正中に5mmのキズが2カ所発生する。写 真ではもう一つのキズがシーツに隠れて写っていません。誤解を恐れずに言わしてもらえば”ソケイヘルニアほどむずかしいオペはない”と思っている。このオペは虫垂炎のオペと並んで外科医の最も初歩的なオペ、つまり外科研修1年生のためのオペと一般 には思われている。確かにその要素はあるがそんなになまやさしいものではない。たしかに1年生でも”なんとなく”先輩医師(オーベン)の言うとおりに”ここ掘れワンワン”状態でいつの間にかオペは完結してしまい、なんとなくできた気になると同時につまらないオペと思う外科1年生もいるに違いない。早くコロン(大腸)やマーゲン(胃)、ラング(肺)そしていつかはピーディー(膵臓の手術)も・・・などと白昼夢をみるのも希ではないだろう。すこし横道にそれてしまったが、とにかくヘルニアのオペは奥が深くそしておもしろい。神様が作った人体の構造を紐解いていきながらオペを遂行せねばならない。最も純粋に”外科的な”オペである。僕がこのオペを初めて行ったのはもう10年以上前のことだが未だに全く完成していない。この間いろいろな術式を行ったが今回のTEP法ほど感動した術式はない。なぜか?それはこれまでの大きく切開するオペでは皮膚、皮下脂肪、スカルパ筋膜、外腹斜筋腱膜、外精筋膜、クレマスタ、内精筋膜など多くの膜をタマネギの皮をむくように、十二単(じゅうにひとえ)を脱がせるように(ちょっとエロっぽいか?)、言い換えれば正常な組織をせっせと破壊しながら病巣にたどretroこのTEP法というヘルニアの内視鏡手術も後腹膜手術と一緒で、本来ないはずの空間を作成してオペを遂行する地底戦の技術が必要だ。しかし実際は特殊な風船(バルーン)がそれを行ってくれる。り着く必要があった。やっとたどり着いても、いつも何となく解剖学的な理解を得られないままヘルニア嚢を処理しメッシュをあててオペが終わってしまい、あ~今日も見切ることはできなかったか・・と幾たび愕然としたことだろう。もちろん一度も再発はさせたことはないし臨床的なレベルではなんら問題はないのであるが、やはりそこに永遠の普遍的な美しさを見いだすことはできなかった。何か腑に落ちないもどかしさがいつも付きまとっていた。しかしこのTEP法という内視鏡を用いるヘルニアのオペはエレガントだ。オニオンスキンを剥くことなく、十二単を脱がすことなく”ダイレクトに”病巣の中心へとたどり着ける。バルーンを用いればオートマチックだ。 しかも視野はきわめて良いしヘルニア門が良く観察できるので"ここを補強すればいいんだな、よしよし・・という気持ちでオペができる。何をなっているかがわかりやすいのでオペを一緒についてくれる看護師さんにも評判がよい。・・などと今回は少し鼻息が荒くなってしまった。今回のTEPというヘルニアのオペは単にキズが小さくて体に優しいと言うのみならず、大きく切開するオペには決して真似することのできない世界を見ることができるという点で感動的だ。

(2002年)

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