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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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giant cyst of spleen

MISSION

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今回諸君に課せられたミッションはこうだ・・
中年の男性の腹壁瘢痕ヘルニアのケースである。過去2回他施設で大きな切開のもと腎結石の摘出術を施行している。その後より腹壁瘢痕ヘルニアが出現、徐々に増大している。このケースに5cm 以下の切開でヘルニアを修復してもらいたい ・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・、それでは成功を祈る

STRATEGY

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ct1CTスキャン。赤矢頭の部位がおなかの中から皮下に飛び出た腸今回は腹壁瘢痕(ふくへきはんこん)ヘルニアの手術である。かなり大きなヘルニアで、しかも左脇腹にX印の約30cmの傷跡をみる。 腹部CTでは腸管が皮下まで脱出しているのがわかる。しかもヘルニア付近の腹壁に筋肉らしき組織はCTで確認できない。つまり腹壁がかなり脆弱化している。このケースにいわゆる開放手術、つまり外側から大きく切開して行う手術はちょっと困難である。ヘルニアの穴をどんなに塞ごうとしてもすぐに失敗するであろう。なぜなら腹壁を補強する人工材料であるメッシュの挿入が困難なばかりか、メッシュを固定すべき筋膜等の強い組織がそこに存在しないからである。つまり今回の手術は足場の悪い土地に大きなビルを立てるようなものだ。それを克服するにはあの方法しかない・・・それは大きな特殊な2重構造のメッシュを腹腔内に固定する新しい方法である。

DOCUMENT

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port site手術中の様子。白いシートがヘルニアの”穴”をふさぐための”メッシュ”です。他施設よりの患者さんが紹介された。紹介状を読むと20年ほど前に腎臓結石の手術を2回うけておりその数年後から徐々に左脇腹が腫れてくるようになったという。その後徐々に大きくなり最近では痛みも伴うとのことであった。
診察室でまずはじめに見たとき、ヘルニアの大きさにはかなり驚いた。しかも外科においては、このように脇腹を斜めに切開する手術はあまりないのでこのようなヘルニアはあまり経験しない。ヘルニアの状態を見るために腹部のCTを撮ったがこれでまた途方に暮れた。腸管がお腹の壁に開いた穴(ヘルニア門)を通 って皮膚のすぐ下まで出ているのは予想どおりであるが、左のお腹の壁(腹壁)を構成する筋肉がほとんど消失している。つまり腸の出てくる穴を閉じようとしても閉じるべき”縫い代”さえない状態だ。これには腹壁の壁の代わりになる人工の布、いわゆるメッシュを使用することとした。しかしあまりにも腹壁の欠損が大きい。そこでおなかの中に置いても大丈夫な巨大なメッシュを使用することとした。

手術は全身麻酔で行われた。いつものように臍の下に1cmの切開をおいて腹腔鏡を挿入する。お腹の中を観察すると腸の出口、いわゆるヘルニア門の様子が手に取るように分かる。今回は3つの穴から小腸と大腸、大網等の臓器が脱出していた。ヘルニア門は一見小さかったがお腹の壁はかなり脆弱で全体を補強しないといけないと判断し大きめのメッシュを使用することにした。4cmのキhilus 腹腔鏡で見たおなかの中。上に丸い穴が3カ所みられます。ここから腸が飛び出します。ズをヘルニアの直上においてクレープ状に巻いた25X20cmの大きなメッシュを腹腔内に挿入した。腹腔内でこれを広げヘルニア門を含む脆弱化した腹壁に特殊な方法で縫いつけた。金属製のらせん状のピンで固定する方法も報告されているが、尖った金属と腸が直接接触するのには抵抗があり今回は特別 に工夫して糸を用いた固定を行った

手術後の経過は良好であった。キズの痛みは軽度であったが早期再発を予防するため、安静目的で1週間は腹帯をして入院をしてもらった。その後も元気で問題は起こっていない。




COMMENT

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incisional hernia手術前の様子。左脇腹に突出しているところがあります。ここがヘルニアです。腹壁瘢痕ヘルニア(ふくへきはんこんへるにあ)これは日常比較的よく遭遇する疾患である。これは腹部の切開をしたことのある患者さんで、前回切開した部位 からいろいろな原因でおなかの中の内臓が皮膚のすぐ下まで出てくるものである。当然こういった合併症が起こり得るので外科医は開腹手術の際に腹壁瘢痕ヘルニアをおこさないように細心の注意を払う・・にもかかわらずヘルニアはある一定の確率で起こってしまう。
 治療はおなかの筋肉の層が開いてしまっているのでそこを閉じればいいことになる。言うは簡単だがこれは外科学の大きなテーマでもある。・・手術をしてもまた再発することが往々にしてあるのだ。どのような手術をしたら再発が少なく患者さんのキズや痛みを小さくすることができるのかというテーマに世界中の多くの外科医が挑戦してきた。その結果 現在では腹壁の欠損が大きい場合は人工繊維を用いた布のシートいわゆるメッシュを用いることが患者さんの痛みや再発を減少させることでコンセンサスが得られている。これと内視鏡手術を組み合わせたものが今回の手術である。ヘルニアを外から治そうとするととても大きな切開をおかざるを得ないばかりかメッシュを”穴”の外から縫いつけねばならない。これではおなかの中の圧にはなかなか耐えきれず再発のリスクは高い。たしかに開放手術でもおなかの中側からメッシュを縫いつける方法はある。しかし十分な縫い代(できれば4cm以上)をとることは容易でない。この点内視鏡手術は手に取るようにヘルニアの様子が分かるので有利だ。よく見えるしキズも小さい、理論的に再発もしにくい・・まさに理想的だ。ただ欠点があるとすればこれまでのoperative scar術後の傷の様子。2本の大きな切開の傷痕は20年前の腎臓の手術のもの。今回は4cmの傷です。メッシュはおなかの中に露出させて腸と触れると腸に穴が開くことがあるといわれてきた。しかし最近おなかの中に入れても安全なメッシュが開発されてきた。これが今回使用した"バード・コンポジックス・メッシュ(商品名)"だ。

多くの外科の先達の努力とテクノロジーの発達に感謝し、これからも患者さんにとってその時代でベストの治療をしていきたいと思う。
(2002年)

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