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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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gastric volvulus

MISSION

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strategy
今回諸君に課せられたミッションはこうだ。緊急で大腸を切除したあとに腹壁瘢痕ヘルニアが発症し手術をしたのだが再発しどんどん悪化している高齢女性がいる。このケースで腹部を大きく切開することなく最小限のきずでこの状況を確実に修復してもらいたい。・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・それでは成功を祈る

STRATEGY

STRATEGY

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hilus hernia赤い矢頭の部分から腸などが飛び出る(ヘルニア門)今回は87才女性の再発腹壁瘢痕ヘルニアのケースである。結腸憩室からの出血を繰り返し腹腔鏡補助下に結腸亜全摘術を行った患者さんである。腹壁瘢痕ヘルニアを発症。前回は腹腔内に腹腔鏡を入れたが広汎な癒着のために続行を断念した経緯がある。
大腸がほぼ全部切除されているのでオペそのものの癒着も著明と思われる。また前回腹部においたメッシュへの癒着も懸念される。今回もメッシュを入れる予定なので小腸を傷つけて腸の内容物が出てしまうと一巻の終わりである。とにかく全く気が抜けないオペになる予感だ。

とにかく集中・集中・集中。焦らず、諦めず正確に剥離操作を続けて行くしかない。

DOCUMENT

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CT herniaCTでは腹壁の一部欠損した部位より小腸が皮下へ脱出している(赤)ヘルニア門(黄)は大きい以前大腸からの出血を繰り返していたため準緊急的に腹腔鏡下に結腸亜全摘術を行った高齢の女性である。なんとか大腸からの出血はおさまり、その後の下血は全くない。しかし、術後1年で前回開腹した約8cmのきずのところから腹壁瘢痕ヘルニアが発症した。腹壁瘢痕ヘルニアは自然治癒することはないため手術を行うことになった。1cmの切開から腹腔鏡をいれて腹腔内を観察したがあまりの広範囲の癒着のために断念した。そして、前回のきずを切開してそこにメッシュを直接縫いつけて手術を終了した。・・しかし、悲しいかな1年もしないうちに再発した。また、同じような手術を行ってもまた再発してしまうのは明らかだった。ご家族との話し合いでも高齢でもあるし、もうそのままで様子を見ましょうということになった。しかし、頻繁に腹痛があるとのことであった。重篤なことにはならないと思われたもののやはり日常生活がかなり制限されているようだった。このような日々が数ヶ月続いた。やはり、なんとかしなければならない。結局再手術を選択せざるをえないと判断した。

全身麻酔がかかり、右上腹部より1cmの皮膚切開をおいて丁寧に腹部の3層の筋肉を分けるように進んでいった。そして腹膜をとらえてメスで切開した。緊張の一瞬である。癒着して空間が無ければ手術はすすまない・・・。腹膜を切った瞬間、お腹の中に空間が見えた・・よっしゃあ、行けるかもしれないと思った。そして直径12mmのポートを挿入した。炭酸ガスをお腹の中に送り空間を確保した後に直径1cmの腹腔鏡をお腹の中に入れた。・・・やっぱりかなり癒着していた。うううんん・・。次のポートを入れる空間はあるのかな?と悩んだ。腹腔鏡をお腹の脂肪の癒着の隙間をぬって右dissection癒着した小腸を丁寧にハサミで切り離す下腹部にちょっとだけ隙間を見つけた。あったあ・・その部位よりまた12mmポートを挿入した。入り口が2カ所できたところで著音波メスを入れある程度の癒着を剥離し第3のポートを下腹部正中から挿入した。

やはり、前回挿入したメッシュには大網という脂肪と小腸ががっちりくっついているではないか・・。しかもきちんと広げて縫い合わせたはずのメッシュがおしぼりのように丸まって本来の役割を果たしていなかった。いったいなんでそんなことになったのだろうか・・。そんなことより問題はそこに固く癒着した脂肪や腸管をどうやって剥離するかであった。不意の出血であれば比較的対処は容易であると思ったが腸管を損傷して腸の内容物が出てしまうと、原則としてこの手術で必須と考えられるメッシュを使用するのは禁忌とされている。腸から出たばい菌がメッシュについてしまうとずっと感染が持続してメッシュを除去しないといけないということになっている。

とにかくハサミだけで癒着しているラインを正確に鋭的に切っていくしかなかった。特に小腸が前回のメッシュに硬く癒着しているところの剥離はかなり神経集中し時間も要した。・・・そして、なんとかヘルニア門を閉じるのに必要・十分な範囲を剥離することに成功した。それから後はいつものようにロール状にしたコンポジックスメッシュを15mmのポートから腹腔内へ落とし込hilus剥離終了。丸いのがヘルニア門(複数あり)みそしてヘルニア門を十分覆うように腹壁に逢着した。4点のみ糸で、その他にはタッカーというオートマチックに固定ができる打釘器みたいな器械でメッシュを固定した。。

術後はメッシュを固定したことによると思われるきずの痛みがあったが徐々に軽快して退院した。

COMMENT

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composix meshヘルニア門をカバーするメッシュコンポジックス外科で扱うヘルニアでもっとも多いのはソケイヘルニア(いわゆる”だっちょう”)である。ソケイヘルニアの場合は比較的治療は定型化されており手術は安心感がある。腹腔鏡手術と大きく切開する開放手術との差もあまり感じられない。また、術後の再発率はきちんとした手術を行えば2%未満と言われている。しかし、今回の”腹壁瘢痕ヘルニア”はやっかいである。手術のために開腹したところの癒合が悪く発生するため、どこに発生するかが分からない。そして、開腹手術で行った場合10%以上再発の可能性があるという報告が多い。今回も一度開腹手術でメッシュを使ってヘルニア門を閉じた。再発しないように十分大きなメッシュで、固定も万全にした・・にもかかわらず再発してしまった。今回は高齢でもあり、しかも前回高度な癒着のため腹腔鏡手術を断念しているといういきさつがある。本当に今度はきちんと腹腔鏡で完遂できるかは不透明だった。腹腔鏡にこだわったのは、開腹手術は腹壁瘢痕ヘルニアには非常に不利であると考えているからだ。まず、ヘルニア門の全体がきちんと見えないためヘルニアの大きさを過小評価してしまうことがある。今回のケースもそうだけれど、大きな”穴”の中にまた小さな穴が複数入っており実に複雑である。それとお腹の中に二酸化炭素をいれてお腹をふくらませているのでヘルニアの位置や範囲が一目瞭然である。逆に腹腔鏡の弱点をあえてあげるならばヘルニア周辺に硬く癒着した腸管などの剥離が難渋してしまう可能性があることだ。幸い今回はなんとかハサミ一本で剥離が完遂できた。他の手術にもまして神経を最大に研ぎ澄まし丁寧な手術操作が要求される。体mesh fixメッシュをヘルニア門を閉鎖するように固定内に人工物を入れる場合菌が付着することは絶対にあってはならないことになっている。人工物は感染に弱い。つまり、人工物がなければたとえお腹の中に膿がたまるような感染があってもいつかは感染は収まる。しかし、人工物に感染がおこるとなかなか収まるものではなく、一般的にメッシュを除去する手術をしなければならないと言われている。幸いこれまでは一度もそういった状況は経験していない。

腹腔鏡手術が明らかに開腹手術に勝っている事を感じるのがこの腹壁瘢痕ヘルニアの手術をするときである。開腹手術ではとうてい知り得ない世界を見ることが出来ることにおいては感動的とも言える。

いまだにこの手術に懐疑的な意見を持たれている外科医も少なくないが腹壁瘢痕ヘルニアの患者さんのために多くの外科医が日常行えるような簡便で定型的な手術手技を確立していかなくてはならない。


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