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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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sympathecomy

MISSION

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今回諸君に課せられたミッションはこうである。22歳の男性が足の裏からの多量 の汗にかなり悩んでいる。手のひらの汗も多かったのだが、それに関しては他施設で3年前に手術で解決している。足の裏の汗もなんとか手術で減らしたいと希望している。かなりの難題だ。・・何が起ころうと当局は一切関知しない・・・、それでは成功を祈る。

STRATEGY

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retro後腹膜手術は地底戦だ!本来ないはずの空間を作成して手術をしていく足底の汗を外科的に解決する手段は腰部交感神経説切除をすることだ。小さな神経を切離するだけのことだがこれが大変だ。まず交感神経の存在するのは腰の骨のすぐ側で近くには大動脈や下大静脈などの大血管とその枝が鎮座している。しかも神経は腰の奥深くに埋まっていてすぐには見ることは困難である。これには腹部のさらに背側の仮想空間である”後腹膜腔(こうふくまくくう)”に入って戦わなければならない。つまり”地底戦”の技術が必要となる。特殊なバルーンを用いて後腹膜腔を仮想から現実の空間とし地底深く眠っている交感神経幹を見つけ出し適切な範囲を切除しなければならない。しかも左右あわせて2回の手術が必要だ。

DOCUMENT

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LST側の腰部交感神経幹を探してしるところ。正面 に見える青白い大きな”壁”は下大静脈Dr.soohsの現在所属しているNAKAGAMI GENARAL HOSPITALのDr.TOYAMAのもとへ1本の電話が入った。沖縄県外から若い男性のようである。インターネットでNGHが足底多汗症の手術をしているらしいとの情報を得て問い合わせのTELである。Dr.TOYAMAは私の最も尊敬するSurgeonの1人である。手掌多汗症のオペをライフワークの1つとしており、足底多汗症のオペも少ないながらこなしているが足底多汗症は手術手技が容易でないのとオペのリスクが高いために積極的には施行していない。1997年以来7例を内視鏡下に行っているが全く公表はしていない。にもかかわらず・・インターネットはおそろしい・・と思った。
前置きはさておきこの症例は問い合わせから手術施行まで実に半年かかった。その理由はできるだけ手術はしないほうがいいと何度も本人を説得したからなのだ。まだ若く後悔するかもしれない、手術となるとある程度のリスクも覚悟しなければならない。しかしどうしても足底の汗が我慢できないという本人の強い希望があったためオペをすることとなった。

オペは全身麻酔下に行われた。後腹膜腔をバルーンで剥離し8mmHgの圧の炭酸ガスで空間を維持する。2本の鉗子でひとつひとつの解剖学的構築物を確認しながら剥離を進める。腸腰筋内側の腰椎椎体にへパリ着くように真珠色の交感神経幹を確認するとほっと胸をなで下ろす。しかしオペはまだ序章だ。交感神経幹、節を比較的広く剥離しレントゲンで何番の神経節かを確認、適切な範囲を切除し手術は無事終了・・とはいかない。片方を終わらせるのもストレスフルなのに右側も残っている・・・右側は下大静脈がありそれに流入する静脈がわれわれの前に立ちはだかる・・とにかく平常心でsympathetic nerve後腹膜鏡で見た腰部交感神経幹(左側)丁寧に、丁寧に、確実に、焦らず決して出血をさせない、腹膜を破らないという気持ちでオペを遂行する。右側の神経節を切除したときにはすでにオペ開始から6時間が経過していた。・・やっと終わった・・・。

術後の傷の痛みはほとんど訴えなかった。オペの翌日には患者さんは退院希望していたが念のため2日目まで入院してもらった。数周後,TELにて本人はかなり満足し喜んでいると家人から聞いた。きついオペであったが苦労は報われた。




COMMENT

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Xray手術中に交感神経節を切除する範囲を決定するために手術中にレントゲンで確認するDr.soohsの現在所属しているNAKAGAMI GENARAL HOSPITAL(NGH)のDr.TOYAMAは手掌多汗症に対し1991年から1000例あまりの胸部交感神経節切除術を胸腔鏡で施行している。それまで開胸下に行っていたオペに比較して手術の傷の大きさは格段に小さくなり痛みもかなり軽減した。この手術が新聞で取り上げられるや多数の患者さんが殺到し最初の1年だけで500例前後のオペをこなしていたとのことである。それまで多汗症という概念はあまり世の中になく掌(てのひら)から過剰に汗の出る状態の患者さんの訴えは精神的なものとして軽く扱われていた時代があった。本人の悩みの深さと医療者側その他社会の人々の意識の間には大きな温度差があったことであろう。胸の奥の交感神経の一部を切除すれば手の血液の流れは良くなり、手のひらからの汗は減少するというのは古くから知られていた。しかし汗を止めるために左右の胸を切り開いて手術をするというのはやはりためらわざるをえなかったと思われる。ところが内視鏡が出現したおかげで、たった5mmの傷が2カ所(現在は1カ所)で同様の効果 が得られる・・・これはまさに革命的な出来事であったに違いない。Dr.TOYAMAのもとに多数の患者さんが一気に押し寄せた事実をみてもいかに多くの方が掌の汗で悩んでいたかがわかる。あれから12年が経過し内視鏡の性能や技術が向上しこの手術も新しいステージに突入している。今回は深くは触れないが、機会があればまたミッションの場を借りて公表したいと思う。

photo scar手術翌日の傷の様子。1.5cmが1カ所と5mmが2カ所ある。反対側にも同様の傷がある。傷のうえに特殊なテープを貼っています。さて今回は掌ではなく足の裏、つまり足底の汗が問題である。手のひらの汗で困っているのに比較して桁違いに少ないものの、やはり足の汗の多さに悩んでいらっしゃる方はいるようだ。1996年までは開腹で腰の交感神経を切除していたが1997年からは内視鏡を利用した方法に変更している。これまで7例と胸部の1000例に比較すると桁が3つも違うが手術の難易度や患者さんの数がかなり違うのでこのような結果 となっている。今回の手術は内視鏡と言っても後腹膜腔といって本来存在しない空間での手術である。この後腹膜腔での手術は難易度が高く、この手術ににおいてはINAMINEが尊敬している千葉の山田英夫先生がまさに神の手である。山田先生の事についてはかなりあるので次のミッションでまた紹介したいと思う。
(2002年)

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