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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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colectomy

MISSION

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今今回諸君に課せられたミッションは以下の通 りだ。72歳の男性がいる。以前より大腸に憩室が多数あり出血をしたが手術以外の方法で止血可能であったため経過をみていた。今回もやはり多量 の下血で来院、緊急大腸内視鏡検査で大腸憩室からの出血であることが確認された。出血をしているのは右側の大腸であるが左側にも多数の憩室が存在している。現在なんとか仮の止血はできている。
このケースに憩室に侵された大腸を残らず切除してもらいたい ・・ただし何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・、それでは成功を祈る


STRATEGY

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be肛門からバリウムと空気を入れて撮った大腸のレントゲン(注腸造影)で多数の憩室(写 真の右側付近のたくさんのぶつぶつしたところ)がみられた。これは手術の2年前の写 真である。大腸の右側(上行結腸)と左側(下行結腸)のほとんどが憩室(けいしつ)に侵されている。数年前のレントゲン検査との比較で明らかに憩室は増加している。今回出血をしているのは右側だけだというのは緊急大腸内視鏡検査で確認しているが憩室がより多いのは左側である。しかも憩室の合併症で重篤になりやすいのは左側である。今回輸血を必要とするほどの下血は2回目だ。総合的に判断すると大腸の大部分を切除しなければならない。1m数十cmの大腸のうち残すのは直腸から25cm程度の長さとなるだろう。今回のケースは良性疾患であるのでやはり大腸亜全摘術とはいえ低侵襲(ていしんしゅう)手術を目指さねばならない。腹腔鏡下に大腸を広範囲に剥離し腹部に小開腹創をおいて大腸を広範囲に切除、小腸と直腸S状部を縫い合わせよう。

DOCUMENT

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be2大腸の全体を見たところ。右側の大腸と左側の大腸の両方にたくさんの憩室(けいしつ)をみた。これは手術になる2年前の写 真。このケースは1990年から多数の憩室があることがわかっていたが、検査をするたびに憩室の数は増加していった。1999年には輸血を要する程のけっこう大量 の下血が憩室からあった。大腸カメラのクリップでなんとか止血されたものの、その数ヶ月後、再出血した。その際に手術的治療を予定していたが患者さんの都合が悪くて手術は無期延期となっていた。今回また下血で入院、なんとか大腸内視鏡で止血に成功した。しかし憩室からの出血をくり返していることから手術をした方がいいだろうとの結論になった。

手術は全身麻酔下に行われた。腹腔鏡を挿入し、盲腸から上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸をどんどん剥離・授動していく。言うは簡単だがこれがまた大変な作業だ。操作の方向がいろいろあり、いかに集中力の継続と頭の切り替えができるのかが鍵だ。しかも大腸癌の時と違って炎症性に癒着をおこさせて手術がやりにくいケースも多い。このケースは少し太り気味で体内脂肪が多かったため比較的手術は難渋した。しかし炎症による癒着等は軽度であったため剥離操作はそれほど困難ではなかった。盲腸から直腸S状部までを剥離し臍を中心に約5cmの切開をおいて腸管を体外に引き出したが剥離が不十分なところがあり創を少し延長して8cm とした。憩室に広範囲に侵された大腸を約1m切除し小腸と直腸を専用の器械で吻合(縫い合わせること)し手術を終了した。技術的にはそれほど困難性はないものの切除する大腸が長いため手術時間は結構長くなり助手のDrやカメラオペレーターの疲労も大きかった。みなさんお疲れさまでした 。

手術後1年以上が経過したが日常生活上は問題ない。大腸が驚くほど短くなっているにも関わらす排便は1日2回程度に落ち着いているとのことである。
specimen多数の憩室(けいしつ)に侵された大腸は約1m切除せざるを得なかった。少しびっくりするのでモノクロにしてみました。残りの大腸は約25cm程度です。

COMMENT

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scar手術後のおなかの傷の様子。臍を中心に約8cmのキズが残った。もしこの手術を開腹だけで行うと30cm以上の切開が必要となる。食生活の欧米化(高カロリー、高脂肪、低繊維食)に伴って大腸の病気が日本人にもかなりのスピードで増加している。特に大腸ポリープや大腸癌、そして今回ミッションXで取り上げた大腸憩室(けいしつ)の頻度が高い。憩室とは腸の壁の一部が弱くなって外側に突出し半球状の小さな部屋のようなものができることである。この中に宿便がたまったりして炎症を起こすこともしばしばである。今回は大腸に数え切れないくらい多数の憩室があったが、食道、胃、十二指腸、小腸、大腸のいずれにもできる。憩室があるだけでは特に治療の対象にはならないがそれに伴う合併症(がっぺいしょう)をおこすと治療が必要となる。憩室に伴う合併症で手術の対象になるのは憩室炎、出血、穿孔(せんこう)等である。今回のケースのように大腸が広範囲に憩室に侵されている場合は大腸の70%以上の切除を余儀なくされる場合もまれではない。今回も右側から出血をしているのはわかっていたため右側だけ切除すればいいのではないかとの意見もあった。しかし左側がむしろ憩室が密に存在し、かなり腸も狭くなっていたため今後合併症をおこす可能性が高い。今回手術で出血のコントロールができてもいつかは再手術しないといけない可能性が高くなる。そのため大腸を広範囲に切除する方針となった。

大腸はおなかの中で広い範囲に広がっており小腸その他で視野が邪魔されるので内視鏡(腹腔鏡)で手術するのは開腹手術に比べ大変である。しかし大腸の大部分を切除(亜全摘:あぜんてき)する場合、開腹手術をすると一般 的にみぞおちあたりから恥骨付近まで大きく切開しなければならない。そうなれば手術後の痛みが大きいばかりでなく腸の癒着による腸閉塞にリスクも高くなる。今回は幸い一時的に大腸からの出血が止まってくれたので待機的に内視鏡下手術ができた。そのため腹部の傷は小さく痛みも最小であった。もし出血のコントロールがつかず緊急で手術をしていたら大きくおなかを開ける方法を選択せざるを得なかっただろう。

(2002年)

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