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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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MISSION

MISSION

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今回諸君に課せられたミッションはこうだ・・
50才代の女性が下腹部痛で救急室を受診した。急性虫垂炎と急性胆嚢炎の同時発症である。このケースで傷が目立たないように最小限の痛みで2つの臓器を摘出してもらいたい・・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・、それでは成功を祈る

STRATEGY

STRATEGY

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ct 術前のCT。上の赤い矢頭の先が胆石、下の緑の先が虫垂です。今回は50代女性の急性虫垂炎と胆石症の同時手術である。深夜の発症であるがマンパワーが充実する朝まで待って虫垂切除と胆嚢的手術を同時に腹腔鏡下で摘出する方針とする。ポートの数は通 常の胆摘術に5mmポートを1カ所追加するのみで施行可能と思われる。まず胆嚢摘出術を行い、引き続きモニターを移動させて虫垂切除を行う方針とする。

DOCUMENT

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appendix腹腔鏡でおなかの中を見たところ。炎症を起こして大きくなった虫垂を捉えています。午前0時30分をわずかに過ぎた頃である。県外出張のとき以外は滅多にアルコールを飲むことはないが、この日は外科スタッフと病棟の看護師さんたちとの懇親会がありアルコールが血中を回っていた。タクシーで自宅に到着し玄関の鍵を開けようとしたときに突然ケイタイのベルがなる。自宅からの帰れコールかと思い発信元をみると病院の電話番号ではないか・・。おそるおそる電話に出るとER(救急室)からであった。救急当直の内科のドクターからであった。”急性虫垂炎と急性胆嚢炎の患者さんがいるんですけど・・・””もしかして今日はイナミネがオンコールだった??””はい、そうみたいです”・・完全にノーマークであった。いつもはいつでもコールされるのが当たり前の生活を十数年続けているので必要があれば即着替えて病院を目指すのだが、その時はそうはいかなかった・・なにもこんな時に来なくても・・と思っても後の祭りであった。急に酔いは醒めて、脳味噌は戦闘モードになっているが、体はエタノールの影響で完全ではない。TELにて当直のDrに入院させておくようにお願いした。2時間後、体が回復してから病院へ向かった。

患者さんの状態は比較的、落ち着いており、深夜に緊急手術する必要はないと判断した。急性虫垂炎だけであれば深夜に手術してもいいと思ったが、このケースでは胆石発作も同時にきているという、よくありそうで滅多に経験しないまれなパターンであった。虫垂だけ切除し後日胆嚢を摘出するか、それとも同時手術をするかの判断が必要であった。緊急手術は虫垂炎といえどもリスクはresected specimen摘出した胆嚢とその中に入っていた胆石、そして虫垂ゼロではない。緊急手術はとにかくオペのリスクを最小限にし本来の目的を達成せねばならないのが原則であろう。色気を出して胆嚢も同時に切除するのはどうか?とも考えた。が、やはり2回も手術をするのは本人にとって苦痛であると考えて夜が明けて、マンパワーが充実してから一期的に胆石症と虫垂炎を解決しようと考え、本人と家族に説明したところ、本人、家族ともそれを希望した。。

夜が明けて通 常の勤務帯になって手術を行った。幸いその日は予定手術がいっぱいで手術室やスタッフが開かないということはなかったので朝一番で手術が可能であった。全身麻酔下にまず胆嚢を摘出し、引き続いて虫垂切除を行った。それぞれの手術はすでに確立されており、安全・確実に行われる時代になってきているが、意外にもこれまで同時に行ったことは僕個人の経験ではなかった 。

手術後の経過は、良好であり、手術翌日から食事を開始し手術から3日後に退院した。




COMMENT

COMMENT

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急性虫垂炎や胆石発作は腹部外科の手術の中では最も頻度の高い疾患である。虫垂切除術は外科医が最初に経験する”本格的手術”であり胆嚢摘出術はその次のハードルである。とはいっても決して簡単な手術ではない。比較的難易度の低いものもあるが激しく困難な虫垂炎や胆嚢炎も数多く経験する。ご存じのように胆石症に対する治療としては腹腔鏡下胆嚢的手術(ふっくうきょうかたんのうてきしゅつじゅつ)通 称”ラパコレ”が世界的にゴールドスタンダードであることは間違いないであろう。特別 な理由がないかぎり最近では開腹(おなかを10cm前後切開)することはないと思われる。
 一方、急性虫垂炎に対する手術は一般的にいまだに開腹手術の頻度が高いのではないかと思われる。腹腔鏡で虫垂切除をルーチンで施行している施設は数多くあると思われるが、胆石のように日本全国津々浦々ということはないであろう。理由はいろいろ考えられるがおおざっぱにいえば腹腔鏡下虫垂切除が開腹の虫垂切除に比較して”圧倒的な優位 性”が見いだせないからだと思う。たしかに複数の研究で腹腔鏡下虫垂切除術は開腹に比較してキズが小さく、痛みも少なく、視野がよく・・・等のメリットがあることは証明されている。しかしデメリットがあることも事実だ。虫垂炎は概して緊急手術なので夜間や休日を問わず行われる。人手の少ないときに全身麻酔で複雑なセットアップを行い、多くの人手を必要とし、手術にかかる時間や費用も明らかに増加する・・・などのいろいろな障害が存在する、等が腹腔鏡下虫垂切除がブレイクしない原因ではないだろうか。

operative scar術後10日目の腹部の様子。傷は殆ど目立ちません。さて、今回のケースであるが夜間に救急室を受診した急性虫垂炎に加えて胆石発作が頻発しているという。さしあたって緊急性のある虫垂炎を治療してから、あらためて胆石の手術を行うという考え方もあるかもしれない。その時は麻酔や手術を2回受けることになる。もし、開腹術という手段しかなかった時代であればそうしたであろう。開腹で胆嚢と虫垂を同一の切開で摘出するのは至難の業である。できない事はないだろうが安全性という面 でやはり疑問が残るであろう。しかし以前のミッションでも登場したように複数の臓器を切除するのに腹腔鏡手術はそれほどの困難性はない。これは開腹術に対する大きなアドバンテージである。人手や特殊な器械を必要とするので、さすがに深夜にお気軽に行うのはためらわれるが、通 常の時間帯であれば問題ないだろう。今回のケースも診断がついたのは深夜であったが手術を朝まで待機することで胆嚢と虫垂を同時に切除することができた。もちろん十二指腸潰瘍穿孔など待てないケースにおいては深夜からでも腹腔鏡手術を行うであろう・・ケースバイケースである。

今回のミッションはインパクトはあまり無いかもしれないがよくありそうで、実際はあまりなかった胆嚢と虫垂の同時手術を経験したので報告した。


(2003年12月)

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