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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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intragastric surgery

MISSION

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strategy
今回諸君に課せられたミッションはこうだ・・
51才の女性の胃粘膜下腫瘍である。腫瘍のできた部位は食道・胃接合部近くである ・このケースに開腹はしないことは当然として噴門の機能を完全に温存してもらいたい・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・それでは成功を祈る

STRATEGY

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smt of stomach胃カメラで見た胃粘膜下腫瘍(手前の盛り上がったところ)今回は51才女性の胃粘膜下腫瘍(いねんまくかしゅよう)である。8年間胃カメラでみているが、最近徐々に大きくなっているという。超音波内視鏡検査、腹部CT等を施行したが、腫瘍の質的診断までには至っていない。良性か、悪性か不明である。

腫瘍の大きさは小さい方であるが、部位が問題である。食道胃接合部の逆流防止の機能を温存するためには開腹術はおろか、通常の腹腔鏡手術では困難である。この手術にもっとも適切なのは、そう、言うまでもなく胃内手術である。

この特殊な手術を高い確率で完遂するために、今回も最強の助っ人に依頼することにした。

DOCUMENT

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resect smt腫瘍を切除中の様子。真ん中の球状のものが粘膜下腫瘍消化器内科のドクターから廊下で声をかけられた。”家族がイナミネ先生のオペを希望しているんでお願いしたい患者さんがいらっしゃるんですけど・・”

内容を聞いてみると、数年前から検診の胃カメラで噴門直下の胃粘膜下腫瘍を指摘されてた。毎年、胃カメラをしていたのだがサイズが小さく、治療の必要がないということで経過を見ていた。しかし、わずかではあるが、徐々に大きくなり、CTでも腫瘍の形はいびつで内部構造もいびつに見えるとのことであった。つまり、悪性を示唆する所見があるということだ。

胃カメラの写真や胃透視(バリウムを飲んでレントゲンを撮る検査)、超音波内視鏡検査等をみると、胃粘膜下腫瘍には間違いない、しかし、サイズは3cm 程度で決して大きいわけではない。古典的には経過観察でいいということになる・・。しかし、よりによって腫瘍の出来てしまったところが最悪である。食道・胃接合部の直下である。ここの腫瘍を機能を温存しながら切除することは容易でない・・・どうすべきか・・。
後日患者さんとその家族が外来へ受診した。腫瘍があることは間違いないが、手術をせずに経過を見た場合と手術をした場合の利点、欠点について時間をかけて説明した。ご本人は”もう、年なので、傷あとは気にしませんから大きくおなかを切っても構いませんよ・・・”といわれた。しかし、今回、我々が悩んでいるのは腹部の傷と同等か、それ以上に大切なことである”噴門機能の温存”であることを説明した。もし、この部位の腫瘍を切除しようとしたら開腹手術で行った場合、おそらく100%近い確率で”噴門側胃切除術”になってしまうであろう。術後、胃液や胆汁が食道に逆流して、食道炎をはじめとしたいろいろな合併症に患者さんはこれからの”長い”人生、悩まされ続ける可能性がある、ということを説明した。悪性度の高い腫瘍であったなら、それも受け入れられるかもしれない。しかしもし、切除したのち、完全に良性のものであったなら、手術をしたこと自体を悔いる可能性がある。可能であれば、最小限の範囲を切除しsuture in ligs腫瘍切除後、胃に開いた穴を縫合閉鎖しているところて、噴門機能を完全に温存したい。この、願いを叶えるにはあの手術しかない。そう、”胃内手術”である。この手術は内視鏡手術の中でもTEMと並んで、特殊技術を要し、難易度が高い。患者さん、そしてその家族と相談した結果、ELKの金平栄二先生に手術を依頼することにした。金平先生にコンサルトしたところ、手術適応は充分あるだろうとのコメントをいただいた。多忙の中寸分のスケジュールの間を縫って沖縄に来ていただいた。

手術は全身麻酔下に行った。手術の流れや技術的なノウハウはここでは割愛するが、もちろん問題なく手術は完遂した。内視鏡手術のノウハウのエッセンスが詰まった、濃度の濃い、そして、とても美しい手術だと感じた。

手術後の経過はやはり良好であった。通常は手術翌日から水分を開始し、2日目から食事を開始、1週間以内には退院することが普通であるが、このケースでは結果的に胃壁を全層切除したことと、噴門という特別な場所であったため少し食事摂取の時期を遅らせた。それでも10日では退院した。病理の結果は平滑筋腫という良性の腫瘍であった。退院後、この患者さんは食事の摂取に関するトラブルや食道炎の症状は全くなく、術前と同じ生活を送られている。



COMMENT

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operation eiji手術中の外の様子。左端がELKの金平永二先生ご存じのように”胃袋”は特別な形をしており腸のように単純な円筒形をしていない。そのため、病変の出来てしまった部位によって同じ疾患でもかなり違った治療を選択せざるを得ないことがある。今回のケースもそのひとつである。もし、この粘膜下腫瘍がもっと別の部位、たとえば胃の下部前壁にあったなら、手術方の時期や方法についてそんなに悩むことは無かっただろう。
今回は、胃の噴門部、つまり食道と胃のつなぎ目の近くに腫瘍が出来ている。これを開腹手術で切除しようとすると腫瘍ぎりぎりで切除することはきわめて困難であると考えられる。きっと”噴門側胃切除術”といって、胃の上部1/3程度を切除する術式になるであろう。2/3も胃が残るのであればいいのではないか・・と考えるのは患者さんだけでなく・・驚いたことに・・外科医でさえ、そう言う意見を持っている人がいる。命に関わるかもしれない病変があるのであるから贅沢はいってられない、確実性が重要だ・・そう言う意見はこれまで主流であっただろう。しかし、内視鏡手術を理解する人々にとっては、この意見はなかなか受け容れられないと思う。噴門を取ると高い確率で胃液や、十二指腸液が食道に逆流して難治性の食道炎を起こす可能性がある。手術時に迷走神経も切れてしまったら胃の動きが悪くなって食事の摂取にも問題が生じてくる可能性がある。胆石の発生する確率も高くなってしまう。

総合的に考えた結果、このケースには”胃内手術”といって、腹壁と胃壁を貫いて内視鏡と手術機器を胃内に挿入して手術を行う、特殊な内視鏡手術がもっとも適切であると判断した。数回の患者さんとその家族との話あいの結果、患者さんは最初、開腹手術を希望していたが、機能温存という見地から、開腹手術よりも内視鏡手術にメリットがあることを理解され、胃内手術を希望された。手術は、日本の内視鏡手術の黎明期からこの胃内手術の開発、発展に大橋秀一先生、故・大上先生とともに直接関与された、あのエルクの金平永二先生に依頼した。頭の中で分かっていても手術が完遂できるとは限らない。成功させたことのない手術を見よう見まねで施行するのは犯罪である。患者さんには”私はこの手術を施行することが出来るとは思いますが、やったことがありませんので、経験豊富で信頼性の高い金平先生に依頼したいのですoperative scar at ligs術後2週間のきずの様子。5mm3カ所と1cm1カ所の小さなキズで痛みは極めて軽いが”と説明したところ、喜んでその提案を受け入れて下さった。

手術は僕の所属している施設に金平先生をお呼びして行った。やはり、達人の手術をみることはとても勉強になる。僕の手術のイメージと若干異なった場面が何カ所かあった。僕の手は腹腔鏡を持っていたのだが、ついつい術者になったつもりで手術の展開を見ていたため、カメラワークが悪く術者に迷惑をかけてしまった(^_^;)。僕の脳の中では”見学者”ではなく”術者”として刻まれている・・・

内視鏡手術をするたびに、自問自答する。”本当にこの手術は患者さんを幸せにするのか・・”今回の手術に関しては、はっきりと”はい”と答えられるだろう。傷の小さいことがアピールされた時代はすでに過去のものとなりつつある。傷の大きさや痛みの少なさよりもより大切な”機能温存”それは、患者さんにとって一時的な問題ではなく一生の問題であるからだ。
(2004年3月)
【追記】金平永二先生は2012年よりメディカルトピア草加病院でさらに理想に近い患者さんに優しい手術を行っています。詳細は下記のリンクからお願いします。
elkrogoELK エルク 金平永二 先生の内視鏡外科サイト
amesa アミーサ 金平永二先生の内視鏡外科アカデミー


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