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lumbar hernia

MISSION

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strategy
今回諸君に課せられたミッションはこうだ。腰に大きなしこりが出来て困っている男性がいる。この原因を突きとめ、大きく切ることなく最小限の切開でこの状況を確実に修復してもらいたい。・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・それでは成功を祈る

STRATEGY

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photo lumbar hernia腰には比較的軟らかい”しこり”がある今回は60才代男性の腰ヘルニアのケースである。比較的まれなケースで修復方法に定型的なものはない。特にヘルニア内容物が大腸などの腹腔内臓器ではなく、腎臓の周囲の脂肪が脱出しているようだ。

腹腔内臓器の脱出であれば腹腔鏡下にヘルニア門を確認してそこにメッシュを置くことになる。しかし、今回は後腹膜腔にヘルニア門があるため、後腹膜鏡下にアプローチしたほうがベターと判断した。

後腹膜鏡下にヘルニア門を明らかにしてヘルニア門はメッシュにて補強することにした

DOCUMENT

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CT lumbar herniaCT.では腰部の筋肉が一部欠損し、そこから脂肪芽皮下に脱出しているのが確認された(黄矢頭)内科のドクターよりヘルニアだろうということで外科へ紹介された。確かに右の腰部が膨隆している。しかし、いくら押してもそのやわらかいしこりは消失しない。ううん・・確かに腰ヘルニアかもしれないが還納できないので脂肪腫などの皮下腫瘍である可能性もあると考えられた。確認のためにCTスキャンを撮ってみるとなんと腎臓の周りの脂肪と皮下に脱出した脂肪が連続しているではないか・・・やっぱり腰ヘルニアだ。かなり希なヘルニアであるが、脱出するのは通常大腸や小腸が多いとされている。大腸や小腸などの腹腔内臓器が脱出していたのなら、それは腹腔内にカメラをいれてその空間の中での戦いとなる。でも今回のケースは腎臓の周囲の脂肪が脱出している。もし腹腔鏡でこの部位を修復するとなると大腸と腎臓を掘り起こしてくる必要がある。これはかなり大がかりなオペとなってしまうだろう。となると、脱出しているのは後腹膜の組織であり、脱出しているヘルニア門もかなり背側であるのであるから腹腔内に入るより、後腹膜腔にダイレクトに入った方がいいと判断した。しかs、後腹膜腔に入っても本当にオペが可能かどうかは道であった。

全身麻酔がかかり、右腰の一部に2cm弱の切開をおいてPDB\バルーンを挿入した。いつものようにまずオートマチックに後腹膜腔の空間を作成した後にバルーンを抜去した。引き続き炭酸ガスを後腹膜腔へ注入しある程度の作業空間を確保して処置を行うための5mmポートを挿入した。本当にヘルニアの修復が出来るだろうがと不安であったが、ひとつひとつ膜を剥離していくとヘルニアdissection中央の丸い穴がヘルニア門(黒い棒は剥離する器具)門から脱出しているらしい脂肪の束を確認することが出来た。流行る気持ちを抑えて少しずつ、少しずつ剥離を続行した。ここが脂肪が脱出しているヘルニア門に違いないと確信を得た後、だめだとは思ったが、脱出した脂肪組織を鉗子で引っ張ってみた。すると、予想もしていなかったが脱出したものがずるずると引き戻せるではないか・・・。完全に引き出した後ヘルニア門を確認した。そして、脆弱化したところはどの範囲だろうと鉗子による”触診”で確認した。

さて、補強はどうすべきか・・。カメラポートを引き抜いてそこから形状記憶のメッシュである”クーゲルパッチ”を挿入することにした。パッチを丸めてその小さな穴からメッシュを後腹膜腔へと落とし込んだ。再び、炭酸ガスを送り、仮想の空間である後腹膜腔を作成し落とし込んだクーゲルメッシュをそのヘルニア門に固定した。出血のないことを確認して気嚢をoffにしてすべてのポートを抜去、皮膚を閉じて手術は終了した。

術後はほとんど痛みもなく経過し3日後に退院した。。



hilusヘルニア門をメッシュでカバーしたところ

COMMENT

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ope senery内視鏡手術の様子腰ヘルニア、といっても腰椎椎間板ヘルニアの事ではない。椎間板ヘルニアであれば整形外科での治療となる。腰ヘルニアは腰の部分の筋肉の脆弱な三角形の部位がありそこから腹部臓器が皮膚の下に脱出する状態である。比較的希で教科書にはわずかなページしか割かれていない。
希な疾患に出くわすことはよくある。しかも、膨大な医学のデータベースにでさえなかなか全く同一のパターンの症例があるとは限らないので実際の医療現場で参考に出来ない場合もある。しかも、医療現場の技術は日々進歩している。ほとんど同じケースというのは希であるしケースは同じでも時代が異なれば全く同じ治療ということも選択しづらいと思う。

腹腔鏡で修復したという報告はあったが後腹膜鏡下に修復したという報告は見つけることが出来なかった。だから、アプローチ方法、ヘルニア内容物の処理やメッシュの種類やサイズ、固定方法をどのようにしたほうがベストなのかは不明であった。

大事な事は、日頃から応用可能な技術を常に磨いておくことだと思う。着たるべき日のために常に準備をしておくこと。準備をしていないものにはチャンスはないということだ。そして、アイディアを練ること。その二つは車の両輪のようにとても大事なことだと思っている。

今回の治療方法が本当にベストだったのかは今後の経過を見ないと何とも言えない。少なくとも最小限の侵襲で、メッシュを使った緊張のないヘルニアの修復という点では原則に従っていると思われた。




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