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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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pseudocystgastrostomy

MISSION

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strategy
今回諸君に課せられたミッションはこうだ・・
40歳代の女性がアルコール性の急性膵炎をくり返している・・今回膵炎後の膵嚢胞が増大し腹痛・発熱も出現してきた。毎日のように強力な鎮痛薬の注射をしている。このケースに開腹をしないで膵臓の嚢胞と胃を交通 させてもらいたい・・いつものことだが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・、それでは成功を祈る

STRATEGY

STRATEGY

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pseudocyst手術前のお腹のCT検査の写真です。赤い三角で指した灰色の丸いところが仮性膵嚢胞です。その上の黒いギザギザが胃袋です。膵嚢胞が胃を圧排しているのがわかります。今回は43歳女性のアルコール性の急性膵炎に続発した仮性膵嚢胞(かせいすいのうほう)のケースである。ときどき腹痛や背部痛があったが自宅でずっと我慢していたとのこと。耐えきれなくなり来院したのが手術の約半年前である。その時から膵嚢胞がみつかっているが徐々に増大している。腹痛も著明になり、発熱もともなってきたため入院となった。CTでは活動性膵炎の所見はない。最大8cmの膵仮性嚢胞が胃を圧排しているせいか食事も摂れない状態になっている。膵嚢胞は腫瘍性の場合もあるので鑑別 が重要だがこのケースは諸々の検査や臨床的な経過から腫瘍性の可能性は低いと判断した。嚢胞と胃壁は十分癒着していると判断し仮性膵嚢胞胃開窓術の適応と判断した。侵襲を最小にするために内視鏡手術のひとつ、”胃内手術”で対処する方針とした。

DOCUMENT

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stomach胃の中に手術の操作に必要な道具類を出し入れする直径5mmポートを入れているところ。正面 の臓器が胃袋です。オペは全身麻酔下におこなわれた。まず臍下に約1cmの皮膚を切開し直径12mmのシース(筒)を挿入する。腹腔内(ふっくうない)に8mmHgの圧で炭酸ガスを送り腹腔内にオペを可能にする空間を確保する。そのポートから直径1cmの高性能のカメラを挿入しおなかの中の空間を観察する。このケースでは胃の周辺が膵炎の影響と思われる癒着が比較的広くみられた。胃は中央部が膨らんで見えたが、それは膵の嚢胞による胃の圧迫を見ていると思われた。腹腔鏡で最も適切な位 置を決めて左上腹部に2cmの切開を置いて小さく開腹した。直視下に胃を体外に引き出して10mmのカメラポートを胃の中に入れた。胃の中をカメラで観察すると胃の粘膜は膵嚢胞に圧迫されて大きく盛り上がっていた。再度腹腔内にカメラを移動し胃の中で作業するための直径5mmのポートを2本お腹の壁を貫通 させた後、胃の壁を貫通させ胃内に手術用の器械が出入りできるようにした。胃内には合計3本の筒が入った。膵嚢胞に圧排されている胃の中の丘の頂上付近を電気メスで切開していく。時々試験的に針で穿刺して嚢胞であることを確認する。緑褐色の内容液が吸引された。少しずつ、止血を丁寧に行いながら電気メスによる切開を続けていく。胃の壁も嚢胞の壁もかなり厚いということは術前のCT検査でもわかっているのだが、掘っても掘っても嚢胞の内腔に到達しない。とんでもないところを掘っているのではないか?とときどき思い試験穿刺をくり返す・・間違いない。ただ集中して切開をするだけの単純作業ではあるが、けっこう緊張度は高い。とその時すごい勢いで嚢胞の内容物が吹き出してくる。緑褐色の液体だ。血液ではない。嚢胞内容液だ!多量 に吸引し膵嚢胞と胃の空間のつながりを確認する。それをさらに広げていってせっかく開通 させた道が簡単に閉塞しないようにした。最終的には約5cmの切開孔を作成した。また残念ながら最終的には切開した胃壁からの出血のコントロールが不十分であったため、数cmの開腹をおいて直視下に縫合して止血する必要があった。

術後は腹痛も消失しCT検査でも嚢胞の消失をみた。stoma仮性膵嚢胞と胃の間を開通させた後のようす。バナナ型の穴が今回の手術で作成したところです。バナナ型の穴の手前が胃でその向こう側が仮性膵嚢胞の空間です。



COMMENT

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scenery手術中の外のようす。胃の中にお腹の壁を通してカメラを挿入しテレビモニターを見ながら手術を行います腹部には10mmと5mmのポートが数本入るのみです。今回のケースはアルコール性の急性膵炎に引き続いて起こった”仮性膵嚢胞”の症例である。嚢胞は経過をみているうちに縮小していくのが多いが、今回のケースのようにどんどん大きくなり腹痛や発熱を伴う場合は手術適応となる。膵の嚢胞は診断が容易でなく良性と思って経過をみていたら悪性であったり、悪性の可能性を排除しえないため手術を行ったら良性だったりの経験を普通 の外科医は何度も経験していると思う。このケースでは経過から仮性膵嚢胞である可能性がきわめて高かったので嚢胞を含めた膵の一部を切除する術式ではなく、膵嚢胞という水の入った風船と胃袋をつないでしまうというオペが適切だと思われた。合同のカンファレンスで用心深いドクターは膵を一緒に切除しほうが安心では・・・との意見もあったが侵襲がかなり大きくなるし、術後の合併症のリスクも増加すると思われたのでそのオプションは取らないこととした。侵襲を少なくするために、今回のオペは胃の中に内視鏡を挿入し、その観察下に”胃の中で手術をする”いわゆる”胃内手術”を選択することとした。普通 の胃カメラは口から入り食道を通って胃の中に入るが、この場合はお腹の壁と胃の壁を経由して胃に入る。胃の中を観察しただけでは何も生まれないので手術を遂行するための器械を出し入れする道(ポート)を作る必要がある。このケースでは5mmの筒を2本挿入した。この2本の道から通 した直径5mm前後のいろいろな道具を使って胃の内腔と仮性膵嚢胞の空間をつないでしまおうというのがこの手術である。従来はやはりお腹を大きく切って、胃の壁も大きく切り開き手術を行っていたが、このような内視鏡手術の出現でこれもまた痛みの少ない、傷の小さい、手術後の回復の早い手術で可能となってきた。もちろん開腹術に比較した場合の欠点もあるが今後徐々に解決されていくと確信している。
CT2術後のCT。左上のCTとほぼ同じところをスライスしていますが術前に見られた丸い嚢胞は完全に消失し、胃はちゃんと膨らんでいます。

(2002年)

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