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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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PPH

MISSION

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今回諸君に課せられたミッションはこうだ。歩くと肛門が脱出しまっすぐ歩けず、いつもかがんだ姿勢で歩かなければならず、腰痛もきたしている女性がいる。出血と肛門周囲のかゆみもある。3度の内痔核と思われる。手術以外の方法はすべて試したが改善しない。このケースにおいて肛門を切らずに手術してもらいたい、ことわっておくが肛門を切らない痔の手術とはいっても一休さんのトンチではない・・何が起ころうとも当局は一切関知しない・・・、それでは成功を祈る。

STRATEGY

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Longo博士の開発した今回のオペを可能にする手術のキット(Ethicon Endosurgery社製)肛門の手術ほど気を使う手術はないであろう。今回のケースのように内痔核(いぼ痔)が原因で肛門の粘膜が全周性に脱出してしまうといったいどのように手術すればいいのか悩んでしまう。肛門という部位 はとにかく繊細なところである。”ぢ”が出たのならきれいさっぱり切ってしまえ!というような乱暴な発想をすると現代の肛門外科は失格だ。肛門粘膜をむやみやたらに切ってはいけない。肛門の持っているセンサーやモーターを失ってしまうからだ。痔はあくまでも結果 であり原因は他にある。このことを見いだし全く新しい手術方法であるPPHをイタリアのロンゴ博士は開発した。今回のケースには2年前に日本に入ってきたこのPPH法が適していると考えられる。

DOCUMENT

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anus手術直前の肛門の様子。肛門粘膜が脱出しているのがわかる。脊椎麻酔、つまり腰からの注射による下半身麻酔で手術は行われた。外来の問診では本人の訴えはかなり肛門が出て、いらいらすると言うことであったが診察時には全周性に内痔核(いぼ痔)が存在するものの肛門が脱出するのは確認できなかった。しかし麻酔をかけて診察すると右の写 真に示すように全周性に肛門粘膜、一部直腸粘膜が脱出している。これをこれまでの手術で治すとすればいったいどのような手術をしたらいいのか悩んでしまう。

しかし今回のミッションのテーマであるPPHを行えば比較的容易に事は解決可能である。右上の写 真に示した手術器械を用いれば肛門から4cm奥の下部直腸粘膜をリング状に2cm程度の幅で切除し同時に切開された直腸粘膜の縫合が完結する。肛門の奥はこれまでの肛門鏡ではなかなか良い視野がとれずに苦労することも多かったがこのキットに含まれる特別 な肛門鏡を使えば驚くほど肛門から直腸までいい視野で観察できその結果 きれいな手術が可能となる。自動縫合器も直腸や胃の手術のときに使用されるものと似ているがこれは全く肛門専用の器械である。正味の手術時間は15分以内には完結すると思われるが止血を確実にしないと手術が終わって病棟のお部屋に帰ってから出血が止まらないという事で手術室に戻る可能性もあるので止血をしつこいくらいに確認している。そのため実際の手術時間は平均30分程度である。

sympathetic nerve手術直後の肛門の様子。肛門には傷が付いていないのがわかる。左からわずか30分後である。肛門を切らないとはいってもやはり麻酔が切れた頃から手術当日は肛門痛を訴える。肛門拡張器の外経が36mmと大きいために肛門括約筋等が進展されるためではないかと思われる。しかし驚くことに手術の翌日からはほとんど痛みを訴えない。そこが従来の手術との違いだ。痛みが徐々に軽減するのではなくスパッと良くなる印象だ。やはりヨーロッパから出ている多くの論文通 り手術後の痛みは従来の方法に比べかなり少なく患者さんの満足度も高いという印象を持っている。

COMMENT

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Longo,APPH生みの親イタリアのDr.Antonio Longoと福岡で話す機会があった(2002.10.09)日本人の3人に1人が”痔主(ぢぬ し)”と言われており、かなり痔の頻度は高い。悩んでいるヒトは老若男女問わずかなりの数にのぼると思われる。しかし 場所が場所だけになかなかお気軽に病院を受診することはできないと予測される。われわれ医療従事者は肛門は排泄にとって非常に重要な臓器であるという認識であり外陰部と同様特別 な聖域という風にはとらえていないのであるがやはり一般的には羞恥心があり悩み悩んでやっと受付時間ぎりぎりに来院される患者さんも少なくはない。また病院を受診するのをためらう理由を聞いてみると痔だと診断されるといきなり”切られる”のではないかとの恐怖で、薬局で市販の坐薬などを購入し対処しているということもよく聞く。
確かに痔の術後の肛門痛は個人差はあるもののかなり痛そうである。教科書的には”痔を切った後の排便時には肛門を割れたガラスが通 るようだ・・”とも言われるくらいである 。
さて今回のテーマである痛みの少ない痔の手術:PPH(ピーピーエイチ)法は左上の写 真に写っているイタリアのアントニオ ロンゴ先生によって開発された。この手術のすごいところは、従来の手術を自動的に簡単に確実に済ますために、特別 な器械を開発したということではないということだ。”ぢ”つまり痔核とは何なのかを基礎的なところから洗い直し、これまでの痔核の手術とは全く違う理論に基づいて、全く違う方法を開発し、それを多くの外科医が簡単・確実に手術ができるように、この器械を開発したところPPHPPH法の手術の概念図(ジョンソン・エンド・ジョンソン:エチコン・エンドサージャリーのパンフレットより引用)だ。これまでの手術は痔核を切除する、つまり肛門を切る手術であった。しかしこの手術は肛門にはいっさい手をつけず、直腸粘膜をリング状に切除し、肛門をつり上げることによって痔核の治療をするというものである。これまでの手術が枝葉を切る治療とすればこの手術は根っこの手術ということになる。1997年この手術を最初に発表したとき、多くの医師は懐疑の目だったという。まさにイタリアのガリレオ・ガリレイが地動説を唱えたときと同様の衝撃であり、簡単には信じることができなかったのも無理はない。しかしこのオペは徐々に認められヨーロッパを中心に数十万例施行されているという。日本とアメリカでは導入も遅かったこともありまだそれほどは普及していないが今後コンセンサスが得られればもっと急速に普及すると確信している。か
(2002年)

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