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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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MISSION

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今回諸君に課せられたミッションは以下の通 りだ。85歳のおばあさんが急性虫垂炎で開腹下に虫垂切除術を施行されている。その3年後に腸閉塞になり腹部を正中で20cm程度開腹し腸閉塞を解除している。その後も軽い腸閉塞をくり返し入退院を余儀なくされている。
このケースに1cm以下の切開で腸閉塞を解除してもらいたい。 ・・ただし何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・、それでは成功を祈る

STRATEGY

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abdXP腸閉塞が再発性し入退院を繰り返した。これは3回目の入院時のレントゲン。赤印の点で小腸がかなり狭くなっている腸閉塞、これは開腹手術後の最もやっかいな合併症のひとつだ。イレウスと呼ぶ人もいるがオブストラクションの方がより正しい表現であろう。それはさておき、このケースは虫垂切除に端を発したくり返す腸閉塞症例である。虫垂切除から3年後に腸閉塞になり開腹手術にて解除されたがその後もまた同様に不完全な腸閉塞をくり返し入退院している。おそらく癒着により腸が曲がったり、締め付けられたりしているのだろう。癒着の範囲が軽度であれば腹腔鏡下の小さな切開で手術が完了すると思われるが癒着が広範囲に及ぶ場合はやはり再度開腹しなければならないだろう。とにかく85歳という高齢でもあり過大な切開・侵襲(しんしゅう)は避けなければならない。内視鏡をいれだめなら、その後に開腹しても遅くはないだろう。

DOCUMENT

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laparo1おなかの中にカメラ(腹腔鏡)を入れると右上のレントゲンで腸が狭くなっていた部位 に一致してバンドにより腸が締め付けられていた。写 真には示していないが、このおばあさんの腹部には虫垂炎の傷が右下腹部に4cm、その後の腸閉塞を解除するために開腹したときの傷が臍の上下にわたり20cm程度認められる。前回の切開部位 には腸管やその他腹部臓器が癒着している可能性が高い。よってこのケースでは一番癒着の可能性が低いと考えられた左下腹部に1cmの切開をおいて腹腔鏡用の筒(シース)をおなかの中に挿入した。幸い癒着もなくスムーズに挿入可能であった。炭酸ガスによる気腹で視野を確保したのち腹腔鏡を腹腔内に入れて観察すると、やはり前回切開した腹部の正中には癒着が認められた。手術前の小腸造影検査で小腸は比較的上流で狭くなっているのが確認されていたのでそのつもりでおなかの中を観察したところ写 真に示すようなバンドが再度形成されており、これによって小腸の一部が締め付けられていることが確認された。これをわずか5mmのキズから挿入したハサミによって切除してあっけなく手術は終了した。念のため他の部位 にも同様なバンドはないか検索したが問題なかった。1カ所のみ小腸が癒着しているところがあったのでその癒着を剥離して手術を終了とした。術後経過はきわめて良好であった。キズのいたみも軽度で腸の動きもすぐにあり翌日から食事を摂ることができた。退院後も問題なかった。ここ1年ほどは外来受診しておらず、お元気で過ごされていると思っている。



band2バンドを切離しているところ

COMMENT

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open surgery急性虫垂炎手術後3年で腸閉塞になり緊急開腹手術施行。小腸に癒着によるバンドが巻き付いていたバンドを切って手術を終了。このときは開腹手術を行った。腸閉塞(ちょうへいそく)は腹部外科医の天敵である。胃や大腸、胆嚢、膵臓、肝臓、または婦人科の手術等、とにかくおなかを大きく切り開く手術をしてしまうとある一定の確立で起こってしまう。しかもいつ起こるのか誰にもわからない。手術後、数日以内に起こる場合もあれば、10年以上経ってから起こる場合もある。腸閉塞とは読んで字のごとく簡単に言えば腸が詰まってその中身が通 らなくなる状態である。これには症状の軽いものから激しい腹痛・嘔吐を伴うものまで様々であるが、概して緊急事態である。治療が遅れたり、適切な治療がなされない場合は生命に関わる事態になってしまう!腸閉塞の治療は外科医にとって大きなテーマのひとつでもある。

さて、今回のケースであるが虫垂切除(モウチョウの手術)を行った3年後に腸閉塞発症、手術以外の方法で治療が困難であると判断されおなかを大きく切開する方法で手術がなされた。閉塞の原因は虫垂切除に関連した癒着でおなかの中にバンド(ひものようなもの)ができて、これによって小腸が締め付けられていた。これを1本切るだけであっけなく手術は終わったが、腹部に大きなキズは残った。今回ははじめに内視鏡をおなかに入れて手術を施行したが1本のバンドを切るだけですんだ。キズも小さく、痛みも少なくて済んだ。1回目の腸閉塞の手術もこの方法で行えば1cm が1カ所、5mmが2カ所のきわめて小さなキズで痛みも少なく施行できたかもしれない。当時はその発想や技術がなかったので開腹したが今後はこの方法も積極的に取り入れる必要がある 。もちろん癒着の範囲が広かったり複雑であったりした場合は開腹でしか治療できないケースも多いだろう。しかしまず腹腔鏡を入れて簡単に解決できるのであればそれに越したことはない。このケースでも内視鏡手術の最大の利点を生かした結果 となった。腸閉塞にも内視鏡手術が入り込む余地が十分あると確信した 。
(2002年)

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