結腸憩室出血の腹腔鏡下手術

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subtotal colectomy

MISSION

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今回諸君に課せられたミッションはこうだ・・
82才の女性の急性大量下血である。血圧が低下し輸血を要する程度の大量 出血である。今回で3回目だ。前回までは緊急大腸内視鏡でなんとか止血できていたが今回は止血できない。緊急事態だ ・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・、それでは成功を祈る

STRATEGY

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cf緊急大腸内視鏡検査。大腸憩室からの出血あり。クリップで止血を試みるも困難であった。82才女性の消化管出血である。血圧が低下する程の大量 出血で輸血を施行している。緊急大腸内視鏡検査が行われ、出血点は上行結腸の憩室からであるということがわかっている。内視鏡医によって出血点へのクリッピングが試みられたがどうしても止血できないという。緊急で開腹下に大腸切除という選択肢もあるがリスクが高い、高齢であるうえに肥満があり、バファリンを内服していて止血が困難である。手術するにしても腹腔鏡か開腹か、切除範囲は?緊急手術に持ち込む前に緊急手術を避けるために最後の手段である血管カテーテルでの塞栓療法で止血を試みてから”待機的”手術、できれば腹腔鏡下に結腸を全摘したほうがいいと思われる。

DOCUMENT

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angiography緊急血管造影検査。緑矢頭は集結している部位で赤矢頭は血管を詰めているコイル病棟の回診を終えて必要なオーダーの整理をしカルテを書いて、そろそろ帰宅しようとした、とある日の19時40分に突然院内専用のPHSのベルが鳴り響く、発信元は内科のDrである。こんな時間に鳴るということは・・”逃げ遅れたか”という予感。予感は的中した。大腸憩室からの出血で、止血が困難であるので診てほしいという。内視鏡室に行けばいいのか尋ねると、血管造影室という。頭を帰宅モードから緊急モードに切り換えて血管造影室にむかった。既に内科と放射線科のドクターが何人か集まって協議をしていた。今回で3回目の下血で過去2回は大腸憩室からの出血で大腸内視鏡下にクリッピングが奏功し止血できたという。今回はクリッピングをしたが完全には止血できていないので大腸に行く血管を詰めて止血を試みているという。透視台に乗っている患者さんをチラッとみると比較的肥満の強い高齢の女性である。主治医にヒストリーを聞くと脳梗塞が疑われて小児用バファリンを内服しているという・・・ 外科的発想からは緊急オペはヤバイなと思った。以前の大腸の造影検査を見ると出血点以外にも多数(無数)の憩室が存在している。今回の止血を行うには大腸の右半分を切除するだけでいいが憩室がひどいのはむしろ左側である。”ちゃんと”治すには直腸以外の大腸を全部取る以外ない、と判断した。緊急で結腸全摘はあまりにもリスキーである。やはり今回はなんとしても放射線科に頑張ってもらって一時的にでも止血をはかり待機手術に持ち込まねば・・と願った。長時間にわたるねばり強いトライで血管塞栓術は成功し緊急手術を免れることができた。放射線科の熱意と技術に感服した、。

specimen colon腹腔鏡下手術で切除した大腸は130cmありました。後日、腹腔鏡外科医の出番が来た。バファリンも中止し出血傾向がおさまり、大腸内視鏡検査時の腸管内のガスもほとんど抜けている。オペの方針は腹腔鏡補助下直腸以外の大腸の大部分を切除する”結腸亜全摘(けっちょうあぜんてきじゅつ)”を行うこととした。全身麻酔下に腹腔鏡を挿入、大腸をおなかの中のいろいろな臓器から剥離し、完全にぶらぶらになったところで臍の近くに5cmの小さな開腹をおいて、層保護のプロテクターを装着し、1m以上の大腸を体の外に引き出す。ここまでくれば、一安心だ。必要な範囲を切除し小腸と直腸を直視下に吻合し手術を終了した。このケースでは特に脾彎曲というところの位 置が高く手術は大変であった。開腹手術でやるとさらに困難であったと思われる。

手術後の経過は予測されたよりは、回復が遅かった。高齢に加え肥満があったので術後の歩行がなかなか進まなかったことが主因と思われる。幸い重篤な合併症はなく退院することができた。術後の便の状態は術前と何ら変化なく、回数も1日1から2回であるとのことでありQOLの低下は認めなかった。


COMMENT

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barium enema大腸のバリウムによる造影検査。赤い矢頭が出血点、緑の矢頭は多数の大腸憩室(憩室)を示しています。消化管出血、つまり胃腸からの出血は概して緊急事態である。程度や原因は様々であり正確な評価が適切な治療につながる。出血部位 は口から肛門までのどこでも起こりうる、程度も安静にしているだけで自然に止まるものもあれば緊急手術を要するものまで様々である。下血をきたす疾患で最も有名なのは”痔核:ぢ”からの出血である。その他に大腸癌や胃潰瘍、十二指腸潰瘍、小腸潰瘍、そして赤痢などの感染症、虚血性腸炎・・・と多くの鑑別 すべき疾患がある。今回のミッションで提示した”大腸憩室からの出血”は最近特に増加している印象を受ける。過去のミッションにもすでに2回登場しているので、また同じネタかと思うかもしれないが、今回はこれまでとすこし勝手が違った。これまでは大腸内視鏡下による出血点のクリッピングというテクニックで止血を計ったのち、全身状態を万全にしてからの待機的手術であった。しかし今回は待機的手術に持ち込むための戦略として、血管カテーテルという血管内治療の手技を用いて一時的な止血をはかれたということであった。 。

どうして緊急手術ではいけないのかというと、手術のリスクが高くなるからである。今回のケースでいえば、患者さんは著明な貧血状態であり、緊急で大腸内視鏡検査時に腸の中に多量 の空気が入った状態であること、アスピリンといって出血のしやすい状態になっていること。夜間のオペはマンパワーも不足しがちで外科医の体調も万全というわけにはいかない・・・等である。もし今回のケースで緊急オペを選択せざるを得なかった場合は開腹、つまりおなかを大きく切り開いて大腸を右半operative scar大腸を亜全摘するのに要したきずは5cmでした。分切除する術式を選択しただろう。腹腔鏡下の手術は腸管の張りで困難を極めたであろう。しかも憩室を左側の大腸に多数遺残させ、次回の出血のリスクは残ったままの不完全な手術ということになってしまったと思う。

消化器内視鏡医、放射線科医、内視鏡外科医のリレーによって今回のケースは最も理想的なオペが行われたと思われる。もし開腹で結腸亜全摘術をしていたら腹部の開腹のキズは30cm程度となり術後はかなり回復がおくれ、諸々の術後合併症との長い戦いを余儀なくされたかもしれない。上の写 真にもあるように切除した大腸の長さは130cmであった。それに比較して腹部の開腹創はたった5cmである。開腹手術で大腸を全部切除するときに最も苦労するところが左上腹部に大腸が伸びているところの処理である。ここの処理のためだけに、みぞおちのところまで大きく腹部を切開しないといけないわけである。このケースでは特にこの部位 が高い位置にあったので腹腔鏡で行えて本当によかったと思った。

食事の西欧化に伴い大腸憩室が日本人でも増加しているのは周知の事実である。動脈硬化による心臓や脳の血管がつまってしまう事を予防するために抗凝固薬を内服している患者さんも多い昨今、今回のようなケースはますます増加すると思われる。


(2003年12月)

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