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Misson for Life Island clinic minimally invasive surgery center. since 2003 
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lumbar sympathectomy

MISSION

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strategy
今回諸君に課せられたミッションはこうだ。30歳代男性で右足の血行障害が発生して強い痛みのために歩行が困難になっている。このままでは足先から壊疽に陥り足の切断を余儀なくされる可能性がある。このケースに血管をさわることなく血流を再開させるようなオペをしてもらいたい・・わかっているとは思うが何が起ころうとも当局は一切関知しないので・・・それでは成功を祈る

STRATEGY

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CT angiogramMDCTで撮影した動脈。右足は膝下から末梢に血流の流れが悪いことがわかる。今回は30才代男性の右下肢の血行障害のケースである。下肢の血行障害をきたす疾患は色々あるがこの場合は動脈硬化ではなく、血管炎によるものである。喫煙習慣のある比較的若い男性で多い疾患である。バージャー病または閉塞性血栓性動脈炎とも呼ばれる。

このケースでは20代には左側のバージャー病による血行障害で左腰部交感神経切除術が行われている。右の血管撮影でも明らかなように左は血行が開通しているが今回は右の血流が悪い。最も大事なのは禁煙であるが、このケースでは禁煙、薬物療法だけで足の痛みが取れなかったため手術を行う事となった。腰部交感神経は腰の骨つまり腰椎にへばり付くくらい深いところにある。一般的な開放手術ではかなり大きな切開が必要となる。この手術もやはり後腹膜に小さなカメラを挿入して行う後腹膜鏡下の神経切除が適切であると判断した

DOCUMENT

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LigasureV後腹膜鏡で後腹膜腔を見たところ。LigaSure Vが有用だった。30歳代の男性が右足の強い痛みを訴えて外来を受診した。10年ほど前にも左足で同様の症状があり手術を受けたという。今回は左足の症状はなかった。そのときの手術は左側腹部を比較的大きく切開して腰部交感神経切除を行ったと古いカルテに記載があった。当時の診断はBurger病(ビュルガー病またはバージャー病と読む)今回も同様の症状が出現している。おそらく同様の診断でいいと思われた。最新型のCTである24列MDCTを用いた血管撮影では右上図に示すように右下肢の膝下の血行が途絶えている。とにかく入院して血管を広げる薬や血栓を防止する薬を投与、そして何より大事な禁煙をしてもらって経過をみた。若干症状緩和したものの充分な効果が得られなかったのと、前回は左の交感神経切除が有効であったことから最終的に今回も交感神経切除術を選択することになった。
全身麻酔がかかりオペが開始された。右の側腹部に1cmの切開をおく。お互いに交差した腹部の筋肉を切らないようにかき分け後腹膜腔への道を切り開く。そこへPDB300を挿入してそのバルーンをふくらませていく。ある程度ふくらんだところで、そのバルーンの中に直径1cmの腹腔鏡を挿入した。透明なバルーン越しに後腹膜腔の様子が見える。腸腰筋、尿管、精巣動静脈もうっすらと確認できた。さらにバルーンをふくらませて、本来あるはずの無い空間を空気と風船の力を借りて作成していく。何度やってもやはり不思議な感じがあるし、最初に思いついて開発したひとは本当にスゴイと思う。充分ふくらんで空間を作成し止血も得られたと判断しバルーンを抜去した。引き続いてカメラ用のBTTボートを挿入、作成した空間に炭酸ガスを持続的に送り込んで空間を保持、作られた後腹膜腔を観察した。出血はほとんど無い。あと2本処置用の5mmポートをその空間へのアクセスルートとして挿入した。合計3カ所、1cm1カ所と5mm2カ所の本当に小さな傷で手術が遂行される。

retroperitoneal cavity腰椎にへばり付くように走る腰部交感神経幹(青矢)とその前面を覆い尽くすリンパのネットワークとリンパ節(緑矢) 備が整ったところでターゲットの腰部交感神経に向かって少しずつ道を切り開いていく。この部分は比較的容易に剥離が可能であるが、腎臓を包んでいる膜だけは比較的固いので何らかの方法で切る必要がある。狭い空間なのでとにかく出血を絶対にさせないような慎重な操作を行うのだが、それでもわずかに血液がにじんだりする。この狭い空間においてはLigaSure Vというハイテクの手術機器が有用だと思っており今回もそれを多用した。止血がかなり確実で、出血することはまず無い。超音波凝固切開装置のようにミスト、つまり霧が立ちこめることもない。若干煙はでるが気になる程ではない。また、ポートから容易に出し入れできる特殊なガーゼ、Troxガーゼが活躍する。わずかな出血であればこれで圧迫して止血すればいいし術屋もドライですっきりする。
話が脱線したが、とにかく正確な剥離層で丁寧に突き進むしかない。腰部交感神経幹は下大静脈という非情に大きな静脈や腰に入る静脈に近接しているのでオペ中の緊張は絶えない。こうしてリンパの網もかき分け腰部交感神経幹に到達して、適切な範囲で切除が行われた。

術後経過は問題なく徐々に期待された効果が出てきた。傷も最大1cmととても小さく術後の痛みも最小限



COMMENT

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sympathetic nerve腰部交感神経幹(青矢)を露出して切除に備える。腰部交感神経切除や副腎腫瘍切除、他後腹膜腔の手術は本当に内視鏡手術の利点が最大に発揮できると感じている。ものすごく深くて周囲に重要な構造物があり開腹手術などを選択すると視野確保や操作性の関係で必然的に大きな切開が必要となる。たった数センチのターゲットのために20cm以上の切開となることもある。内視鏡手術は中ででやっている操作は殆ど同じであるが、かなり拡大して見えるので肉眼で直接みるより精緻なオペが可能と考えている。後腹膜の魔術師 東邦大学佐倉病院 内視鏡治療センター 教授 山田英夫 先生に出会えて本当に良かったと思っている。

さて今回はバージャー病の患者さんに対する後腹膜鏡下手術である。血管が詰まっているのに何で神経を切るの?という疑問は当然あると思う。血管が詰まる病気の代表は心臓の冠動脈が狭くなる狭心性や詰まってしまう心筋梗塞が有名だろう。これらにはやはり風船で血管を広げたり、直接血液の流れを作るための血管をつなぐバイパス術を行う。しかし、このバージャー病はこの血管手術が適切でない病気である。細い血管が詰まっているのでバイパスができないのである。実は原因不明であり、厚労省の難病にも指定されている。30代から40代の比較的若い男性に多く、喫煙と大きな因果関係があるようである。禁煙をすれば効果的であることはよく知られている。その他、血管を広げる薬や血小板などの働きを押さえて血管の詰まりを防止する薬物療法も行われる。では、今回行った腰部交感神経切除はどうか・・・。理論的には交感神経は血管を収縮させその血流を落とす方向にはたらくので交感神経を適切に遮断すれば血液の流れは多くなるはずだ。実はこの手術が有用であるかどうかはまだ明らかではなく意見が分かれている。詰まった血管を広げることは期待できないがその他の細い血管を広げることによって虚血による足の激しい痛みが緩和し潰瘍が治りやすくなるという報告もある。今回のケースでは10年ほど前のオペが効果的であったとの見解と禁煙、薬物療法だけでは症状緩和が不十分だったことがオペを選択した根拠の一つである。もちろん手術するかどうかは最終的にはあらゆる情報をこちらから伝えて患者さん自身に決めてもらったことは言うまでもない。

以前はこのオペはかなりストレスフルであったが、徐々にストレスの程度は軽減してきた。もちろん症例を重ね経験値がアップしてきたこともあるが、Vally Lab,TycoHealth Care社のLigaSure Vと愛知県の大崎メディカルのトロックスガーゼを導入してからその傾向は強い。狭い空間でいかに良好な視野を確保できて出血のリスクをかぎりなくゼロにしていけるか。これは内視鏡手術に限らず外科全般に言えることであるが、特に後腹膜腔のような狭い窮屈な空間はもし出血でもして術野が確保できなくなればこの手術は全く先へ進まなくなるからである。

最近は大腸切除術においてもほとんど後腹膜アプローチをすることは無くなり後腹膜腔鏡下手術は本当に限られたものになった。しかし、患者さんの幸福を考えた場合、この手技は必要であり次なる大変革が起こるまで決して色あせることは無いだろうと思っている。




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