ルーワイ胃バイパス術のプライベートトレーニング
長い道のりの第一歩
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2004年2月17日、3月19日の2回、病的肥満に対する外科的治療である”腹腔鏡下胃バイパス術”のトレーングのために福島県須賀川市を訪ねた。この場所を訪れるのは何度目だろう。今回のミッションは胃バイパス術のための腹腔鏡下の縫合をシミュレーションすることである。当地にあるエチコン研究センターのアニマルラボでこのオペを日本で唯一完全腹腔鏡下で行うKAZこと”笠間和典”先生と落ち合うことになっている。腹腔鏡手術のなかで最も難易度の高いオペのひとつにランクされているこの手技をマスターすべく気合いは充分だったが・・・。
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腹腔鏡下ルーワイ胃バイパスの大きな壁
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数多くの困難なミッションをこなしてきた僕にとっても”完全腹腔鏡下胃バイパス術”は大きな”ヤマ”である。KAZの全面的協力もあり2004年12月から"病的肥満に対する完全腹腔鏡下胃バイパス術"を始めた。その患者さんの術後経過は驚くほど良好で体重は4ヶ月で38Kgも減り心身の健康を取り戻している。手術をうけて本当によかったといってくれた。その後もこの手術をどうしても受けて健康を取り戻したい、人生を変えたいという患者さんが続いた。北米、南米、ヨーロッパ、オーストラリア等ではポピュラーな治療法であるが、日本ではこんな治療法があることさえ認知されていない。このオペはかなり難易度が高いし、日本国内でも一定数以上を行っているのはkAZだけである。とにかく、KAZのように安全に確実にこのオペをこなすことができるようにならねば・・と理論的な勉強に加え縫合練習を続けてきた。今回は完全な本番の前に動物(子豚)の協力を得てヒトでのシミュレーションをしようという目的だ。われわれの目標とするSuper Star、アメリカのKelvin Higaのオペのビデオは穴があくほど見てイメージトレーニングをした。あとはそのイメージを自分の体で確認するだけであった。・・・しかし、例によってまたおのれの未熟さを自覚せざるをえないという地獄をみることになった。イメージも出来ている、トレーニングボックスでの修練も欠かさなかった、出来るはず・・・。しかし現実はやはり大きく立ちはだかった。KAZやKelvinが簡単にやってのけているような操作が出来ない・・うそだろ・・なぜ・・。ショックだった。小腸と小腸を吻合する操作、何しろリニアステイプラーという自動縫合器をただ小腸にあけた小さな穴に差し込んでファイヤーするだけのことがこんなに困難であることを思い知らされた・・まるである日突然自転車に乗れなくなってしまったような感じだった。頭の中はconfusionしている。やはりこれは大変なことだ・・と再認識した。問題点をひとつひとつクリアしないと・・簡単ではない。KAZのヒントもあり何とか曲がりなりにも出来るようにはなった。また、縫合にしても、頭の中のイメージと実際の感触のギャップにも悩まされた。結局胃のパウチを作成することや、パウチと小腸を手縫いで吻合することもトレーニングしたがやはり問題点をさらけ出しただけの結果になった。『これは本当に大きなヤマだ』とんでもないところに足を踏み入れた・・戻ろうかな、辛くて困難だけど登ろうかな・・遭難するかもしれないが、やはりミッションのプライドをかけて登ることを選択した。リベンジのためにその1ヶ月後も同様のトレーニングを行った。少しは進歩したが頂上までの道のりは遠いと感じた。長い長い上り坂・・辛くても笑って歩いていこうよ、とKAZに励まされた。今回のトレーニングはエチコンエンドサージャリージャパンのみなさん、特に山内さんと種本さんに大変お世話になりました。また、このオペや内視鏡手術一般をさらに勉強したいという手術室の看護師の河野さん、上江田さんにもお世話になりました。そして最後にわれわれとわれわれの患者さんたちのために尊い命を捧げてくれた子豚さんたちに深く感謝いたします(2004年2月)
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