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『きず』の少ないTANKO  胃粘膜下腫瘍切除 編

単孔式腹腔鏡手術 シングルポート内視鏡手術 SILS
single incision laparoscopic wedge resection of stomach tumor

今年はブレイクすることが間違いないであろう、単孔式腹腔鏡手術、Tanko(タンコー)。なぜここに来てTankoなのでしょうか?。なぜ、この手術が今になって流行の兆しをみせているのでしょうか?前回は虫垂炎でしたが今回は健診で見つかった4cmの胃粘膜下腫瘍の切除で虫垂よりちょっと難易度が上がります。

単孔式腹腔鏡手術(TANKO)とはどんな手術なのでしょうか?

単孔式腹腔鏡手術(たんこうしきふくくうきょうしゅじゅつ)とは基本的にはひとつの切開をおくことによって完遂する腹腔鏡手術のことです。従来の開腹手術も普通はひとつの切開で手術を行うのですがその大きさが全く違います。開腹手術は5cmから30cmくらい、Tankoは2〜3cm 程度と桁違いに小さくなります。Tanko以外の一般的な腹腔鏡手術では体に複数箇所、通常3から6カ所(胆摘で4カ所、胃切除で5カ所)の1cm前後の切開をおいて手術をします。確かに大きな切開はありませんから伝統的な開腹手術に比較して痛みはかなり少なくなりました。ところが複数箇所の”小さなきず”は決して整容上、完全に美しいものとはいえませんでした。そこで、それらの複数のキズを1カ所に集めてさらに整容性を高めることはできないかと言うことで生まれた手術です。10年以上前に最初の報告がなされましたが、そのコンセプトが理解されず認知されるまでこれだけの時間を要してしまいました。

単孔式腹腔鏡手術(TANKO)のメリットはなんでしょうか?

やはり、手術によって作られる『きずあと』が最小限になります。つまり整容性に優れていると言うことは間違いないというのが大多数の意見だと思います。人の体にはひとつだけ生まれながらに持っている『きずあと』があります。そうです、臍ですね。おへそは最初から『きずあと』ですから、そこを切開してもまた”きずあと”になるだけなので多くのTanko手術は臍に切開をおくのが基本になっています。痛みが普通の腹腔鏡手術と比べて少ないかどうかはまだはっきり分かっていません。しかし、僕のごくわずかな経験からの印象では痛みは少ない感じがしています。今後はこの痛みの程度に関して科学的に検証して行く必要があります。その他のメリットは今のところはっきりしたことは分かっていません。少なくとも手術を施行する外科医にはオペのストレスが増すことはあれ直接のメリットはないように思えます。でも、キズがない手術を受けた患者さんに喜こんでいただけるならそれは外科医自身の喜びにもなるのは間違いありません。

胃粘膜下腫瘍の切除で単孔式腹腔鏡手術(TANKO)のデメリットはなんでしょうか?

現在分かっているデメリットはいくつかあるかと思われますが、もっとも明らかなのはこれまでの腹腔鏡手術に比べて手術が『窮屈になる』ことでしょう。難しくなるということではなく窮屈になるという印象を持っています。腹腔鏡手術そのものは生まれてから20年以上が経過してますからほぼ成熟してきたといえます。腹腔内で何をなすべきかはきちんとした内視鏡外科医であればすでに分かっているわけですからオペにおいてのターゲット臓器付近での手操作そのものの困難性はあまりない印象です。ただ、ひとつの小さなきずから複数の細いカメラや手術器械を出し入れする必要がありますのでとっても『窮屈』になります。具体的に言えば、外科医の目となる”カメラシステム”と外科医の”手となる”鉗子・エネルギーデバイス類が体の『外でも中でも』ぶつかりあってしまいます。それと鉗子やクリップ、エネルギーデバイスのターゲットへのアクセス角度が鋭角になるためその先端が見えづらくなりますので安全の確認が少しだけ困難になるかもしれません。また、縫合や糸結びなどの操作が必要になる場合もその角度制限から従来の方法では容易でなくなります。そのため、それらの『窮屈さ』を克服するために内視鏡外科医は様々な工夫をする必要があるわけです。大きく分けると2つに分けられます。そうです、①主手術器械を新しく開発する(ハード)、②手術の方法、戦略を変える(ソフト)、ですね。新しいオペが出てくるとどうしてもこの二つのことはしっかり『研究』しなくてはなりません。ただ、手術の大原則は安全で確実に施行されることなのでキズを小さくするために安全生が低下することがあるとすれば、それは本末転倒と言わざるをえません。ですから、オペのqualityを下げないで施行できる戦略を立てなければなりません。

単孔式腹腔鏡手術(TANKO)はどんな臓器・疾患に行われていますか?

まだまだ、多くが行われているわけではありませんが、現在もっとも多く行われているのは、胆石症に対する『腹腔鏡下胆嚢摘出術』、虫垂炎に対する『腹腔鏡下虫垂切除術』、大腸疾患に対する『腹腔鏡下結腸切除術』、胃粘膜下腫瘍に対する『胃部分切除術』、病的肥満に対する『減量手術』、他婦人科手術などいろいろな臓器に適応されつつあるようです。

単孔式腹腔鏡手術(TANKO)は胃粘膜下腫瘍に安全に施行可能ですか?

まだ、試行錯誤で施行されている手術ですから従来の『多孔式』腹腔鏡手術に比べるとそのノウハウの蓄積は少ないと言わざるをえないでしょう。安全に普及させて行くにはやはり段階を踏んで慎重に行っていく必要がありあります。多くの外科医の経験や工夫を持ち寄る研究会が発足しましたので一人の経験をみんなの経験にしていくことで安全な普が可能になっていくと思います。患者さんにとってメリットがあるのなら我々外科医はやはり困難性を克服していくことを怠ってはなりません。

胃粘膜下腫瘍切除における単孔式腹腔鏡手術(TANKO)はどんな利点がありますか?

最近、検診で胃粘膜下腫瘍が見つかることが多くなりました。小さいものですと1年ごとの経過観察が勧められますが3cm を超えると治療の対象になります。ガイドラインでは5cmを超えると開腹手術が勧めれれると書いてありますがその根拠は書いておりません。おそらく5cmを超えると腹腔鏡操作が困難になって開腹に比較して腫瘍の皮膜を損傷して腹膜播種再発等のリスクが上昇するということだと思われます。しかし、胃がんの手術と違ってリンパ節郭清は不要ですから腫瘍に触らずに十分安全なマージンを確保して切除できる注意深さと技術があるのなら開腹しなければいけない絶対的な理由は無いと思っています。とはいっても、虫垂炎や胆石症と違って、悪性のポテンシャルがあるのでその辺の判断は慎重になされるべきだとは思います。
 さて胃粘膜下腫瘍における単孔式腹腔鏡手術(TANKO)の利点は痛みの軽減というより『整容性』の向上がもっとも大きいと思います。ただ、虫垂炎や胆石よりもさらに年配の患者さんが多いのでもしかすると整容性というメリットはそれほどないかもしれません。それと、手術になるのは5cm近くの腫瘤が多いので、体外へ摘出するときにキズを広げやすい臍部に最初から3cm程度の皮膚切開を置いておくことで単独のキズで手術が完遂出来る可能性があります。そういった意味では3カ所ある1cmのポートのキズのうちの一つを3cmへ広げるより最初から3cmあるキズに3本のポートを入れてオペをしたほうが理にかなっているのかもしれません。いずれにしても胃の形や構造は複雑ですから腫瘍の発生した部位によっては驚くほど容易に切除できると思いますのでその時はTANKOはいい選択肢になると思います。

単孔式腹腔鏡手術(TANKO)とはどんな手器具が必要ですか?

これまで普通に行われている腹腔鏡手術の器具で可能です。ただし、窮屈さを取り除くには『細くて長い光学視管(テレスコープ)』、フランジ(ヘッド)が小さく、長いアクセスポート、極細の鉗子、等があったほうが有利だと思います。時に体腔内で湾曲できる鉗子やエンドリニアステイプラーなども有用であるかもしれません。

70歳台の女性で、検診で見つかった胃粘膜下腫瘍。超音波内視鏡、CTで腫瘍の最大径は4cm余り。胃壁外への発育がメインで基部は細くなっているというのが術前の放射線科の読みであった。そのため形態的には腹腔鏡下に切除するのに比較的好都合であった。しかし、発生した部位が胃の最も高い位置(胃底部)、しかも後壁にあり奥深い上に直接腹腔鏡で見えるところにないのが懸念材料だった。深いと視野は悪いし、操作がしづらい。そして何よりすぐ近くに出血しやすい脾臓があるので出血させないように丁寧に扱う必要がある。とりあえず方針としては毛嚢を開けて胃体上部から胃底部の後壁にアプローチして腫瘍を求めた。エネルギーデバイスとしては超音波切開装置はミストが発生するのでポートが5mmと細くてその本数が少ないTANKOだとミストを除去するのが困難である。そのため今回は5mmのLigaSureVを使用した。浅いところの操作はsolo surgeryで問題なかったが脾下極付近から奥はさすがに大網が落ち込んで短胃動脈(胃脾間膜)にカウンタートラクションがかけられず操作は難渋した。そこで左季肋弓直下から5mmのポートを1本追加した。その結果、オペが驚くほど簡単になった。大網を十分切離した後、いよいよ胃体上部後壁に出現した腫瘍を捉えることができた。術前のCTと同じく胃壁にはごくわずかな範囲でしか腫瘍は胃壁を共有していなかった。そのため切除自体は非常に良好な環境でできると確信した。実際エンドリニアステイプラーで容易に切除できた。切離ラインから軽度oozingあったが止血操作をを必要とするほどのものはなかった。左季肋弓下の5mmポートはドレーンを挿入する場所とした。よく考えてみると臍からドレーンを出すわけにはいかないのでドレーンを入れる必要があるオペであればやはり純粋なTANKOにストリクトに拘らなくてもいいのではと思った。

tanko port臍を2.5cm切開して3本のポートを挿入。 補助も1本追加した。divide nets大網を切開して毛嚢に入り胃の後壁へのアクセスルートを作る。smt of stomachステイプラーで腫瘍を捉えたところwedge resection腫瘍をエンドリニアステイプララーで胃壁から切離した。endopouch切除した腫瘍は収納袋へ入れられて体外へ摘出される。post op scar手術直後のおなかの様子。おへそのみドレッシング。白い綿球は2cm余り

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