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Delta-shaped gastroduodenal anastomosis for LDG

デルタ吻合をもっと知ろう

デルタ吻合の良さを知るには正しい理解とその施行プロセスを確立すべきだ 
Inside delta-shaped anastomosis (Kanaya's Billroth I method)



 今回は腹腔鏡下のビルロートI型再建であるデルタ吻合について簡単に触れたいと思う。
デルタ吻合は言わずと知れた胃がんに対する腹腔鏡下幽門側胃切除後のBillroth-I型の再建方法としてあの金谷誠一郎先生が姫路医療センター時代(現在は大阪赤十字病院)に開発した方法である。開発当時ほとんどの施設で腹腔鏡補助下幽門側胃切除術(LADG) 後の再建は上腹部に5cm前後の小開腹をおいて行われていた。体外に残胃と十二指腸断端を引き出して直視下に手縫いで吻合する施設もあれば、Circular staplerを用いた後壁打ち抜き、またはいわゆるHemi-douboleテクニックでBillroth I型再建を行う施設もあった。いずれも「再建するためだけの理由で」小開腹が付加されていた。それまで完全腹腔鏡下のBillroth-I型吻合が困難だったため残胃ルーワイ法で再建を行う施設もあった。デルタ吻合は今でこそ全国各地で数多く施行されていると思われるが、デビュー当初は”フランケンッシュタイン手術”とか酷評されたと聞いている。確かにその複雑な縫合ラインはこれまでの外科手術ではちょっと受け入れがたいものであったと思う。発表されて10年以上が経過した現在でも、未だにこの手術の欠点?を指摘する声もある。そのため、その欠点?を補うためにいまだにそれをmodifyした方法が開発・発表されている。また、デルタ吻合は困難でうまくいかなかったとの声も聞くこともある。その理由はおそらくデルタ吻合に対する正しい理解が出来ていないことに起因するのではないかと思っている。
 よくデルタ吻合三角吻合と呼ぶ人がいる。確かに共通点もあるがその構造はクジラとジンベエザメほど違うと思っている。前者はほ乳類で肺呼吸、後者は魚類でエラ呼吸だ。デルタ吻合を敬遠するグループの意見を集約すると「十二指腸のクビを必要以上に長くする必要がある」ということと「血流が不安な場所ができで気持ち悪い」ということだと思う。しかし、僕の印象としては普通に適切な郭清を行えば自ずと十二指腸は授動されデルタ吻合に必要な距離を確保できると感じている。せいぜい細い上十二指腸血管1本の処理を付加するだけだ。また、血流に関してであるが、これまで7年以上行ってきて1例の縫合不全も狭窄も経験していない。要は正しい方法を行っているかどうかということだと思う。ここで、三角吻合とデルタ吻合の違いを見ていこう。

三角吻合は基本的に端々吻合である。そして吻合に際して余剰の組織を切除するいわゆる2度切りが3角形の3辺に生じる。また1辺1辺ごとの独立した操作が行われるためその都度支持糸をかけたりと時間と手間暇がかかる。3角形の底辺は内翻であるがその他の2つの辺は外翻となる。それと、腹腔鏡で普通に行うと小弯側の角がかなり奥まってステイプルラインの重なりを作れないリスクを意識する必要がある。そのためには十二指腸をひねる必要があり結局十二指腸の授動が必要になる。開腹手術での見下ろす視野では死角は少ないが尾側から頭側の腹腔鏡的視野では死角になる可能性があるので注意が必要だと思っている。

デルタ吻合は基本的に”機能的”端々吻合である。その特徴としては1回目のステイプラーの腹部瘢痕デルタ吻合を用いた腹腔鏡下胃切除術後の腹部 50代男性・胃がんの術後には見えませんね。ファイヤで3角形の2辺が既に作成されていることだ。その2辺は内翻となる。そして残りの1辺を閉じることになるのだがその辺は腹腔鏡視野でエラーが起こりにくい場所に来ている。60mmのステイプラー1発で閉じるか、45mmの2回で閉じるかは術者の安心できる方法でいいと思っている。ただ、重要なポイントは「Landing point」と「Take off point」ではないだろうか。6時の縫合ラインに正確に進入・着陸すること、そして12時方向に「正確に」離陸すること。これが意外と難しい。特にTake offポイントが胃側に曲がると「陸の孤島(虚血島)」を作る可能性はあることは意識すべきであろう。そのためMISSIONはこれらの2つのポイントを一度にケアするのが難しいと考えて敢えて45mm2回で閉じることにしている。1発目はlandingにそして2発目はtake offへの集中である。
 デルタ吻合を安全で確実に施行する方法は開発された金谷先生が詳細に著していらっしゃるのでそれらを参照していただければと思います。基本的には自己流はやめて術者と助手の役割、そして各々の動作をオリジナルに忠実にコピーすることこそが近道ではないかと思っています。(注意:スマートフォンではビデオは見れません)

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